三ノ池植物園標本室 下 睡蓮の椅子 (ちくま文庫)
三ノ池植物園標本室 下 睡蓮の椅子 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
しんごろ
上巻と比較するとガラッと話がかわりましたね。葉の時代と風里の時代を行き来し、プラス夢の世界。摩訶不思議な世界で、縁と数奇な運命が巡り巡って、風里と奏と出会うのは必然だったのかもと。この下巻に関して、個人的には植物園の人達が置き去りにされたような気がする。もうちょっと植物園の人達を登場してほしかったかな。苫教授のドタバタぶり、小菊ちゃんと石塚の恋の行方とか、風里の刺繍のこととか、もっと掘り下げてほしかったかなとは思いますが、面白かったです。
2020/02/20
ちょろこ
繊細さを感じた、一冊。下巻は終始繊細さを感じた。人の心の奥底に眠る表からじゃわからない繊細な部分。それを見せられていくと同時に、その一つの箇所を誤って傷つけでもしたら何もかも壊れてしまいそうな取り返しのつかない方向へ向かいそうな、そんな危うさをも感じた時間だった。心の縺れほどやっかいで繊細なものはない。でもそれも人と自分と向き合って生きているからこその証でもあるのかな。縺れが解けたらまた未来へ思う存分心を伸ばせる。それをファンタジーで表現された作品、草地に一歩踏み出すような柔らかな読後感が良かった。
2020/07/12
KAZOO
下巻では主人公の恋愛やこの建物をめぐるむかしの人間関係などが語られます。それが巡り巡ってということで主人公の相手が関係したりしていることが明かされたりします。物語としては面白いのでしょうが最近のほしおさんの作品からするともう少し刺繍や植物園絡みの話があった方が個人的には楽しめたという気がします。
2020/01/25
yukision
上巻で時々挿入されていた過去の風景がいよいよ実体を持って現在と交差していく。暗く不穏な雰囲気に飲み込まれそうになりながらも、徐々に強くなっていく風里の姿に希望が持てる。ファンタジー要素がやや強いが、幻想的な世界にとどまらず、命が繋がっていく現実ともうまく融合して読後も温かなものが残った。
2021/02/10
佐島楓
二世代にわたる物語だということを読者は唐突に知らされる。いくつかの恋と繊細すぎたゆえの悲劇が糸のように紡がれていく。女性としてはハラハラさせられる展開だったが、つねに光を感じられるあたたかい物語であることが救いであった。光はすなわち、希望である。そうか、この物語は、生きていく上での希望を描きたかったのだろう。
2018/12/20
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