妖精悪女解剖図 増補版 (ちくま文庫)
妖精悪女解剖図 増補版 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
Inzaghico (Etsuko Oshita)
昭和の悪女ってこんなだったなあ、という例がずらり。いたいけで守ってあげたくなるような若い女性が実は美人局と組んでたり、なかなか男性運に恵まれない女性がひょんなことで男性を手玉にとるようになったり……女性は「か弱き存在」というのが大前提の時代だからだったこそ、生きた設定だ。「ヒモ」の男性も、昭和じゃないとここまで輪郭がくっきりと描けなかっただろうな(類型的とも言えるけれど、こういうダメ男は魅力があるのよね)。
2021/05/25
🍣
悪女に焦点をあてたサスペンスという定義がもうすでに安っぽくて古臭いんだけど、それに加えてブラジァ、スウェーター、ジヨオカアと、昔ながらの言葉遣い、胸のなかでつぶやいているはずなのに話し言葉を括弧で使う表記、シリアスな雰囲気であるはずなのにややコメディタッチで結末のあっさり具合になんだかな。好きなのをしいて言えば手袋のうらも手袋だけど、期待していたより楽しめなかった。日下三蔵編に外れはないと思っているからなんとなく肩透かし。第二弾も買っちゃったのに。
2021/09/19
ヒサ子。
期待してたより、ずっと面白かった!! 『妖精悪女解剖図』したたかな女は、悪女にもみえるのね。なかなか思惑通りいかないので、結末が予測不能。昭和のサスペンスだけど、ろくでもないヒモ男とズルズル同棲してしまったり、事件をキッカケに男を手玉に取ることを覚えてしまったりとか、令和でもじゅうぶん面白い。 『犯罪見本市』ユーモアあふれるクライムサスペンス劇場といったところ。小気味よくて、人情あふれてほろ苦さもありの、二転三転する短編が2作。 都筑道夫は初めて読んだけど、鬼才というのも納得です。
2021/05/26
糸くず
短篇集『妖精悪女解剖図』と、四つの中篇を収めた『犯罪見本市』の前半二篇の構成。『妖精悪女解剖図』では、「手袋のうらも手袋」「鏡の中の悪女」がいい。前者は、自信のなさゆえに好意を抱いていた男性を犯罪者に仕立ててしまう女性の悲劇で、「待つ女」から変貌をとげていく彼女の心理が哀しい。後者は、誘拐事件をきっかけに妻の出生の秘密を知っていく男を描いたサスペンス。スリル満点の二転三転する展開もいいが、事件が終わっても付きまとう暗い影を描いた不穏なラストが素晴らしい。
2021/08/27
てまり
角川文庫版はもともと持ってる。やはり「手袋のうらも手袋」がよい。昭和のスリラーだと女性は魔性や恋心がフォーカスされがちだけど、これは自尊心からの行動、それから自己肯定への材料としての愛情を求める姿が書いてある。ストーリー的には最後の二編が好き。勢いで二転三転する明るいアクション物、哀愁もある。
2021/06/09
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