宿で死ぬ ――旅泊ホラー傑作選 (ちくま文庫)
宿で死ぬ ――旅泊ホラー傑作選 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
ちょろこ
暑いからホラーの一冊。宿を舞台にした豪華作家陣粒ぞろい短編集でしばしヒンヤリ。日常から抜け出せる束の間のひととき。それが旅であり宿。その宿が、非日常さえも超越して恐怖の場所へと変わるその怖さを味わえた。彼岸と此岸の交錯、女の内に燻る埋み火の恐怖、実話だというホテル怪談が印象的。綾辻さん、山白さん、都筑さんも良かったな。この作家順構成も巧く、今までこの物語に流れていた恐怖時間は何だったんだろうと全てを白昼夢で包むような小川さんの〆も良かった。宿の裏スペシャルプラン"ザ・異界へのおもてなし"を体験した気分。
2022/07/02
KAZOO
旅先でのホラーで11人の手練れの作家さんが書かれています。遠藤周作、恩田陸、半村良、都築望夫、小川洋子など読ませてくれますが、一番怖いと感じたのは福澤徹三の「屍の宿」でした。最後で場面が変わってしまうのと、それまでの宿の従業員も本当に生きている人間なのかもわかりません。
2021/10/28
こら
『家が呼ぶ』が名アンソロジーだったので、今作も安心(?)して手に取れました。テーマが宿だと、「以前この部屋で客が自死を~」とオチがつくのを想像しがちだが、実はそんなベタは少ない。まさしく反転が鮮やかな「屍の宿」、ホテルマン視点から不穏さを積み重ね、最後は読者を突き放す「深夜の食欲」、リゾートホテルで出会ったある中年女性を描く、奇妙な味「トマトと満月」等バラエティは豊富。宿を舞台に様々な角度から、恐怖が忍び寄って来る。名作揃いと思ったら、編者は角川ホラー文庫のベスト集と一緒の方なんだ、なるほど!
2021/08/29
HANA
前作『家が呼ぶ』が安住の地が無くなる怪異なら、本書は旅先にも逃げ場がない事を示した一冊。少し昔の作品から最近のものまで収められた作品は幅広いが、個人的には昔の作品に洒落たものが多いイメージ。半村良「ホテル暮らし」とか最後の一行がとても良いし、遠藤周作「三つの幽霊」のリヨンの話とか雰囲気をここまで仕立て上げられるのは流石の筆力である。最近の作品に目をやれば恩田睦「深夜の食欲」とか映画を見ているようだし、福澤徹三「屍の宿」も宿の嫌さ加減は格別。実話怪談もあるし、読むと旅に出るのがとても嫌になる一冊でした。
2021/06/28
中玉ケビン砂糖
【日本の夏は、やっぱり怪談】人前でハダカにして読むのがやや憚られるようなどストレートなタイトル(少なくとも、旅行の計画を立てている人の側で読むとか)。福澤徹三「屍の宿」。オチは予想ついたけどウマいしやっぱり怖い。坂東眞砂子「残り火」。怖さというより土俗的なイヤさに関しては随一。客死頓死横死……って、どこかもったいないし悔しいものであるように思う。断然インドア派なので、せめて最期は肌に馴染んだ畳の上で迎えたい、夏。では帰宅しての開口一番「やっぱり家がいちばんね」なのかというと……(『家~』に続く。多分)。
2022/08/11
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