楠勝平コレクション ――山岸凉子と読む (ちくま文庫)
楠勝平コレクション ――山岸凉子と読む (ちくま文庫) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
伝説の漫画雑誌『ガロ』で活躍し、30歳の若さで世を去った楠勝平の漫画から、山岸凉子がチョイスした短編集。巻頭の『おせん』を読んだのは2度目だったが、初読の時と同じ驚き。貧困というのは、人にひどく悲しい処世を身に付けさせてしまう。それが誰かとわかりあえない一線を強く引いてしまう。だから貧困はなくさないといけないし、金銭や物質万能の世は変えなくてはいけない。未読の方は立ち読みで良いから、この『おせん』だけでも読んで欲しい。面白いと思えない漫画もあるが、出てくる子ども達が、本当に子どもである。確かに夭逝の天才。
2021/09/27
Vakira
ちくま文庫に感謝。現代マンガ選集、COM傑作選とか約50年も前の70年代漫画を今読めることが素晴らしい。そしてその掲載作品がいい。今読んでも新鮮。いや、今だから新鮮なのか。なかなか心に訴えるものがあります。ここのところ白土三平さんばかり読んでいたのでアシをやっていた楠さんの作品は如何に?と思い、このちくまさんの企画に乗ってみる。楠勝平さんの登場はガロ。作品の選定は山岸涼子さん。何作か最近の選集で読んだ作品がありましたが成程選ばれるだけのことはあります。作品は殆どが時代劇。江戸庶民の人情ものと思いきや、深い
2022/01/11
チャーリブ
夭折の漫画家・楠勝平さんの作品から12編を、山岸凉子さんが思いを込めて選びだした作品集。彼女のあとがき「名もなき人々の生を通して己の死を見つめつづけた夭折の作家」は、30歳で亡くなったこの早逝の作家を悼みつつも、彼の作品に対する今日的な再評価ともなっています。最後の「彩雪に舞う…」などのような、病気や死を扱った作品を読むとどうしても作者の境遇と重ねてしまいます。「やすべえ」のような「生き残った者たち」の物語をもっと読みたかった。個人的には、大胆な画面構成や精緻な細部など絵としての作品に強く惹かれます。◎
2023/11/14
阿部義彦
「おせん」「暮六ツ」のみ既読でしたが、ガロで発表された夭折された漫画家の傑作選。編者と解説は山岸凉子さんです。心臓弁膜症で30歳で亡くなった作家です。どれも人生の一部を鋭く切り取った作品ばかり。人間の業を良い方にも悪い方にも鋭く抉っています。時代物ばかりかく人かと思っていましたが現代劇の「大部屋」はちょっとした群像劇で読み応えも有りました。単なる勧善懲悪ではなく、どす黒い人間の内面、一種の狂気も描かれていて、かなりしんどい思いもしました。山岸凉子さんの解説も素晴らしいです。
2021/10/24
marumo
きたがわ翔が激奨していた上に、解説が山岸涼子…。そりゃ読むよね。ガロ系の白土三平の弟子だったという方ですが、30歳で亡くなられています。気風のいいおせんが、貧さゆえに思いもよらぬ浅ましさを露呈する「おせん」ガッカリして吠える若旦那も若旦那だよ、まったく。そして、ひ弱すぎて溺れる人を救えなかった男のねじくれた心理を描く「はあー、はぁー、はぁー」子連れの女に上り坂で易々と追い抜かれるシーンがせつないわ。好きか嫌いかは微妙ですが、確実に記憶に残る印象深い作品集でした。
2023/01/05
感想・レビューをもっと見る