野呂邦暢 古本屋写真集 (ちくま文庫)
野呂邦暢 古本屋写真集 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
昭和に40代の若さで亡くなった芥川賞作家・野呂邦暢が撮影した日本各地の古本屋の写真集。もちろん写真集にしようとして撮影されたものではない。遺品として出てきたこれらの写真を岡崎武志がまとめて小山力也が解説した1冊。この度の文庫化で、野呂さんの古本エッセイが数本掲載されている。野呂邦暢といえば古本屋を主人公にした『愛についてのデッサン』や、古本屋さんが書いたエッセイ集の名作・関口良雄『昔日の客』(夏葉社)の表題になった古本ゆかりの作家である。今のカメラの性能とは比べものにならない画質なのに、涙が出そうである。
2021/11/29
もりくに
野呂邦暢さんの「諫早菖蒲日記」は読んで、感心した記憶があるが、程無く急逝、残念に思った。彼がこんなに「古本屋」が好きだとは、全く知らなかった。この本はタイトル通り、彼が70年代に撮った「古本屋」の数々。彼を追慕する「菖蒲忌」に 招待された岡崎武志さんが、彼の兄から「こんなものが」と見せられたのが発端。岡崎さんはその時の気持ちを、「ニュー・シネマ・パラダイス」のトトと同じだと。この写真集は、盛林堂書房で少部数出版されたが完売。それがこの度、「ちくま文庫」に。(筑摩、えらい!)デジタル補正なくそのまま。→
2022/06/11
まこみや
まさか、こんな本まで文庫になるなんて。ちくま文庫に感謝するしかないですね。『野呂邦暢古本屋写真集』なるものが上梓されて好事家の間でかなりの額で取引されていると知った時、そんな少部数の稀覯本に僕自身接する機会はないだろう、と半ば諦めていました。本屋で目にした途端、思わず「あ」と声が出ました。素人っぽい古本屋の写真の中に、古本を巡るエッセイの中に、本と古本屋に対する、野呂邦暢のいとおしむような、ふるえるような時間と記憶が定着させられていて、いつまでも飽きることがありません。
2021/11/15
Roko
1970年代後半に撮られた古本屋の写真は、フィルムで撮られたもので、汚れがあったり、ボケていたリという所がありますが、それは敢えて修正していません。野呂さん自身は早稲田や中央線沿線の古本屋がお好きだったそうですが、神保町の写真が多いのは、店の数の多さからなのでしょうか。 店の看板、ウインドウの中に積まれた本に貼られた「○○全集」という黄色い紙、店の前にある100円均一のワゴン、木製の書棚。これぞ古本屋という雰囲気が伝わってきます。とても神保町へ行きたくなりました。
2024/05/09
pirokichi
岡崎武志さんが遺族から託された写真、古本にまつわるエッセイ、そして編者対談を収録。とても良かった。野呂さんはもちろん編者の岡崎武志さん、小山力也さんの古本屋愛、古本愛に胸が熱くなる。ピンボケしてたりして決してうまい写真ではないのに、ずっと見てたくなる。時々野呂さん自身が写り込んでいるのもうれしい。エッセイには若き日の本好きな野呂さんが生き生きと描かれている。エッセイを読んでまた写真を見ると、撮った後に本を物色している野呂さんの背中が見えそう。それにしても写真集とは。野呂さんは驚かれていることだろう。
2022/03/20
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