林静一コレクション ――又吉直樹と読む (ちくま文庫)
林静一コレクション ――又吉直樹と読む (ちくま文庫) / 感想・レビュー
Vakira
漫画の純文学。と言うか文学的漫画というか?数ページの短編に人生とか人間の業とか子供には見せられない愛欲とか、でも少年は知ってるよ的な不思議な感覚の林さんの漫画の印象。安西水丸さん林静一さんを真似たね。又吉とちくま文庫に感謝。又吉さんの企画がなかったらもう見れなかったと思う。現代の竹久夢二と評された女性美。実は林さんアニメ界では宮崎駿さんと同期(東映動画)。して幻の名作「狼少年ケン」を担当。CMではロッテの「小梅」の少女、漫画ではガロに掲載、有名どころは「赤色エレジー」、これはあがた森魚さんが歌ってた。
2021/12/22
nemuro
帯に「1970年代の若者の哀別を戦慄的に描いて衝撃を与えた『赤色エレジー』をふくむ作品群を精選!」。裏面紹介文には「1960年代後半、沸騰する対抗文化の渦の中核となった『ガロ』を象徴するマンガ家として時代の寵児となった著者」ともあった。一応、1970年には中学生になっていたのだが「ガロ」は喫茶店でたまに拾い読み程度だった私なので読んでみての懐かしさは案外少なかった。映像的で演劇的。読者の想像力が刺激される。あの、あがた森魚の「赤色エレジー」のモチーフも頷けるところ。そうか、ロッテの「小梅」、小梅ちゃんだ。
2022/05/11
阿部義彦
又吉直樹さんが精選した林静一さんの漫画が10編です。この本の収録 分のおよそ半分を占めるのが抄録の「赤色エレジー」で物語後半から衝撃のラストまでを収録です。初収録の短編もあります。表紙が素晴らしいです!巻末には又吉直樹さんと林静一さんの対談ものっています。ガロの産んだ文化遺産として、つげ義春さんの「ねじ式」と共に語り継がれるのではないでしょうか。裸電球から黒い染みの様なものが垂れ下がっていたのが電気を点けるとともにサッと跳ね上がって消える描写や、こうもり傘に顔が現れそれと対話したり。古風と前衛の共演。
2021/12/20
しゅん
「巨大な魚」の、景色が薄くて死と生活の陰惨さに溶け込む感じ。「花ちる町」の、あっけらかんとした顔で折り重なる残酷。部屋の狭い描写が次ページで突然見開きで外に開かれたり、線形の風がひたすらに吹き続けるコマが連続したりと、絵が自由自在で楽しくて、それが物語の救いのなさと響いていて変に気持ちよさを覚える。20分くらいで一気に読んだ。
2022/01/27
新田新一
昔、作者の『赤色エレジー』を読んで、感動しました。その本を紛失してしまい残念に思っていたら、本屋で本書を発見。購入し、すぐ読みました。黒と白のコントラストを多く取り入れた個性的な画風です。例えば、「花咲く港」では、降りしきる雨の中に女性の白い顔が浮かび上がります。この黒と白の対称は、男と女、光と影というように、この世界にある対極のものを鮮やかに描き出すのに適している気がしました。今の世の中は、いろいろなものが均一化されて、対極のものを描くのは簡単ではありません。その意味で作者は昭和の漫画家そのものです。
2023/09/05
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