桜 ――文豪怪談ライバルズ! (ちくま文庫)
桜 ――文豪怪談ライバルズ! (ちくま文庫) / 感想・レビュー
buchipanda3
桜幻想譚アンソロジー。桜の風情が醸し出す妖異な美しさが各篇に詰まっていた。文体や形式も多彩で七変化のような読み心地となり気が付けば桜づくしの世界にすっかり酩酊気分。「桜の樹の下には屍体が…」というギョッとなる文は梶井作品だったのだなあと。そして安吾も桜の無言の美しさの陰に狂おしい趣きを見つけてしまった一人なのだろうか。高田衛による評論のグロ・美・笑い・異常・恐怖に合点。泉鏡花「桜心中」は慣れない文語調だったが読み進めるほどそのリズムにハマった。他では日野啓三の奇妙な往復書簡、倉橋由美子の連作が気になった。
2022/04/08
KAZOO
東さんの編纂による三冊目の「桜」に係る怪奇アンソロジー集です。さくらというと華やかな満開の桜を思い出しますが、むかしからその根元には「死体」が埋まっているのではないかというイメージが植え付けられていました。定番の梶井、坂口のほかにもさまざまな作者の作品が収められていて楽しめました。とくに小泉八雲、加門七海が私には印象に残りました。
2022/01/18
さつき
泉鏡花から始まり、梶井基次郎、坂口安吾など錚々たる顔触れの桜×怪談アンソロジー。人は何故、桜に魔を見るのか。こんなに美しい花だから心浮き立つ思いにもなるけれど自分自身の心の闇や虚ろをも映しやすいのでしょうか。あまりに難解で正直言って感想が浮かばない作品もありましたし、ぞっとするほど気持ちがわかるなぁと思うものもありました。桜吹雪を眺めつつ心に残る読書になりました。
2022/04/06
藤月はな(灯れ松明の火)
虚空、または異界に誘い、攫うように人々に降りしきり、咲き乱れる桜。その妖美さは死体を糧にしているのではないかと思わせるような凄みを帯びている。既読が多いが、中上健次氏の「桜川」が印象深い。ここでは桜の妖艶さでも隠し、守り切れずに巻き添えになった子供への追悼が込められているから。そして「消えてゆく風景」は桜の醜さ(鼻に突く青臭い樹液の匂いと指に纏わりつく感触の気持ち悪さ、幹かと思いきや蠢く毛虫の群れなど)を真っ向に描いていて好きです。展開も問答で構成して実存が透けていくような展開もSF的とも怪奇的とも取れる
2022/02/27
しばこ
桜が咲くこの時期にぴったりのアンソロジー。「桜の樹の下には」と「桜の森の満開の下」が続けて読めたのは嬉しい。 桜の持つ魅力と魔力とは、人が勝手に感じ取っているものだけれど、物語の中で十分存在感を感じさせるのもやはり桜ならでは。
2022/03/28
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