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名前も呼べない (ちくま文庫)

名前も呼べない (ちくま文庫)

名前も呼べない (ちくま文庫)

作家
伊藤朱里
出版社
筑摩書房
発売日
2022-09-12
ISBN
9784480438416
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名前も呼べない (ちくま文庫) / 感想・レビュー

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mayu

2作収録。表題作は不倫相手に子供が産まれて、絶望して仕事も辞めてひきこもる恵那。自分の想いが伝わらないことへの八つ当たり。どこまでいっても相手の気持ちではなく、自分の気持ちばかり。大切にしてくれる親友さえも傷つけ、幻を映し出して悲劇に浸って自分を追い詰める姿や可笑しくもないのにヘラヘラと笑う姿はどこまでも痛い。もう一作品はベットの下に居場所を求める美波が主人公。両作共に幼い頃の家庭環境がトマラウとなり重くのしかかり人生を狂わせる。なにが起こる訳じゃないのに、いつ終わるだろうとずっと息苦しい読書だった。

2022/10/04

蜜柑

他人を勝手な解釈で分かろうとすること、他人の予期せぬ言動に対して理由をつけたがること、今の自分自身にもドキッとさせられるような台詞回しがあってとてもよかった。 文章自体は読みやすくて、今の歳で読めたことも良かったのかもしれない。自分は自分、他人は他人だということは当たり前なことなのについつい忘れる時があると改めて思った。 初読み作家さんだったけどこれから読んでいきたい。

2023/12/21

あざすたしあ

ミステリー小説じゃないけど、表題作「名前も呼べない」は、読み終えた瞬間すぐに頭に戻って再読してしまった。不倫相手との関係がダメになり引きこもる主人公・恵那の苦しい胸の内、生きづらさについて容赦ない筆致でえがかれていたのでヒリヒリした。 「私がいつも笑っていたのは、怒られたり見下されたりする前に自分をばかにしておけば、少なくとも人から痛みを受けることはないからだ。けっきょく、誰よりも自分を憐れんでいたのは私だった。」へらへらいいひとのふりをしている人間の本音を1文で書き切る作家の才能とセンス、凄い

2024/05/28

tycho

久々に投稿したなあ。短編が二篇、サクッと読めつつ、心に重石がのしかかりつつ、読了。解説も秀逸。我々が日々抱える罪悪感と、それはエゴではないか、本気で抱える罪悪感に殺される人、その先の救い、こんな感じで私は思考をめぐらせ、苦しみました。面白い。これは面白いです。世の中の無自覚に人を傷つけてのほほんと生きる全ての人間は、ぜひこの小説と共に自らを顧みてほしい。

2022/10/09

しろまつ

弱い人の内面を掘り下げている描写がリアルだった。弱い人と一言で言っても、その内側には様々な要因や感情が複雑に絡み合っていて、その人自身ですらはっきりと弱さの原因が掴めていない。絶対に面倒だと思うはずなのに、そんな自分のために怒ってくれる他人を大切にしなければいけない。そう理屈としては分かるけど、弱っているとその理屈すら上手く受け止めきれず、手を差し伸べてくれる人を突き放してしまうのが、読んでいてしんどかった。誰だって些細なきっかけで、恵那や美波のようになってしまう可能性があるのだと思った。

2022/10/10

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