無限の玄/風下の朱 (ちくま文庫 こ-55-1)
無限の玄/風下の朱 (ちくま文庫 こ-55-1) / 感想・レビュー
れどれ
序盤から中盤にかけては、おおマジックレアリスムからずらした新しい境地にいざなってくれそうだぞ、と心震わせながら読めたのだが、後半はいかにも現代文学っぽさが強く、そのいかにもさについていけなかった。不条理と主題の主従関係が好みとは逆転してしまっていた。
2023/11/19
ひでお
登場人物が男性だけの「無限の玄」。血の繋がりからのがれようとする男たち。女性がいないと血は繋がらないのに。登場人物が女性だけの「風下の朱」女性であることを否定するかのような女性たち。いずれもとても危うい心の揺れ動きが読み手にリアルに伝わる力作と思います。
2023/10/20
qoop
時代を超えた陽気な演奏と不穏な力関係を孕む男性のみの音楽一家を訪れた、家族の死にまつわる不条理。スポーツに打ち込む上で、女性であることを病/穢れとみなす歪つな女性性を求めるグループ。本書収録の二篇はともにグロテスクだがそれゆえ清々しくもあり、目が離せない。明らかにジェンダリスティックな問題領域に含まれつつも、それを越え出ようとする執拗で不穏な情念の存在を感じさせる。
2023/03/09
オールド・ボリシェビク
死者が毎日、定刻に蘇る。女子大生が部員のいない野球部を作ろうとする。どこか撓んだ世界が繰り広げられている。中で動いている人物はまともなのに、世界が撓んでしまっているのだ。いろいろな文学賞を受賞、評価の高い作者なのだが、私にとっては異物感だけが強烈で、どうにもなじめませんでした。あと一作、読んでみたいところだね。
2022/11/11
東京湾
死んでは蘇る父に戸惑う兄弟、理想に執着し続ける女子大生...失われた筈の何かに囚われ煩悶する者たちの姿が、静かに心をざわつかせる。三島賞受賞作と芥川賞候補作、いずれも導入から読者を掴んで離さない、秀逸な中篇だった。作品の根幹には家父長制への抵抗がうかがえる。
2022/11/04
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