箱の中のあなた ――山川方夫ショートショート集成 (ちくま文庫 や-61-1)
箱の中のあなた ――山川方夫ショートショート集成 (ちくま文庫 や-61-1) / 感想・レビュー
アナーキー靴下
2022年にこんな本が出ていたとは知らなかった。既読作品が多いのが残念ではあるが嬉しい。個人的には創元推理文庫の『親しい友人たち』の方が好きだけど、本書の方が収録数は多い。巻末に収録されている山川方夫、星新一、都筑道夫の座談会(1961年)は面白かった。ところで改めて読むと著者の作品はフランス文学の香りがする気がする(いやそんなにフランス文学読んでないけど…でも著者はフランス文学科だったようだし外してないはず…)。理知的な精神に曖昧さを抱えたままの情動、他者と接して初めて何かが生まれる点が。孤独さえもだ。
2024/06/11
Shun
優れた作品をいくつも遺し、悲運にも早逝した純文学の書き手である山川方夫(やまかわまさお)による作品集です。主にショートショートの分野において第一人者の星新一や都築道夫と並び多くの作品を書いた著者ですが、この度初めて知ることとなりました。ショートショートという最も短いタイプの小説ではより書き手の個性が感じられるようだ。星新一作品とは違った持ち味が特徴で、どちらかと言えば文章が純文学寄りで短い話でも味わい深さは絶妙。読めば文章の中に深く入り込みつつ、終わりは早く線香花火のように余韻は儚い。第2巻も楽しみです。
2023/02/10
tonpie
星新一らとともに昭和30年代に「ショートショート」ジャンルを開拓した一人で、芥川賞・直木賞候補にノミネートされていたが35歳で交通事故死。生前出版のショートショート集には江藤淳の熱い推薦文があった。 初読みだが、知的でお洒落で繊細な短編でした。最近のホラー系作品のギトギト、グジュグジュの刺激に疲れた時に読むと、非常に良いです。SF的な場合もミステリー的になる場合もあるが、「奇談」というくくりのほうがすっきりすると思う。シャイな気質が吉行淳之介を思わせる。↓
2024/01/23
まめこ
★★★★☆やっぱり印象深いのは「夏の葬礼」。遠いあの夏の記憶を封印するため10数年ぶりに訪れた疎開先で目にしたのはあの人の葬列。過去からの開放と同時に未来を閉ざす残酷な突き落としが見事です。「蒐集」気品と気力溢れる…ただの壺(笑)?「未来の中での過去」四季がない時代がくる?墓場の中まで持ってゆきたい後悔や感情のうねり、優しい(ダークな?)嘘が溢れるショートショート41編。
2023/07/28
くさてる
既読の作品もあったけれど、読み応えあって良かった。いわゆるショートショートぽい奇想と文学的な深みが融合している作品は、どれもしっかりと濃い。昭和の風俗を描いているのにもかかわらず、時代の感覚的なずれは不思議なほど感じない。人間の普遍的な感情があるからだろう。良かったです。
2023/04/23
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