長くて短い一年 ――山川方夫ショートショート集成 (ちくま文庫 や-61-2)
長くて短い一年 ――山川方夫ショートショート集成 (ちくま文庫 や-61-2) / 感想・レビュー
アナーキー靴下
ちくま文庫の山川方夫ショートショート集成は2冊に分かれていたことに気付き、続く本巻を読む。「頭上の海」や「トコという男」はこちらに収録されており、2冊セットで考えれば創元推理文庫『親しい友人たち』より充実している(解説にも創元推理文庫版の収録作は2冊にすべて収録と記載あり)。講談社文芸文庫で読み印象深かった「娼婦」も本巻に収録されており、また読めて嬉しい。内容は全然嬉しい気持ちにならない話だけど…。「頭上の海」はやっぱりとても好きだなあ。これを好きだと思うことに後ろめたさを感じるほど、真に迫るものがある。
2024/06/21
くさてる
バラエティある内容で、やはり読み応えがありました。昭和という時代を感じるものもあったけれど、時代の変遷とは関係ない人間心理の綾を描いて面白い。既読だったけど「頭上の海」が圧巻でした。
2023/04/23
Inzaghico (Etsuko Oshita)
小林信彦の文章が掲載されているので手に取った。なかなか世に出られなかった小林信彦(中原弓彦)の『虚栄の市』を推奨したのが山川方夫だったとは知らなかった。今、古書価も高くて手に入らないんだよな、この本。山川が亡くなったときの小林の追悼文がいい。こういうふうに偲んでくれる友がいるというのは貴重だ。今の小林からはちょっと想像がつかない。にやりとさせるユーモアや、あとからじわりとくる苦さみたいなのが実にうまい。読むタイミングってあるんだな、と納得する作品ばかりだ。わたしにとっては今が山川方夫の読み時なんだろう。
2023/06/10
kana0202
トコのシリーズがおもろかった。あとは頭上の海。多くの作品の背景に戦争があるというのも昨今の芥川賞系の心理小説とは違っておもしろいところ。
2023/03/03
amanon
この二巻にわたるショート・ショート集、もう少しテーマ別に細かく分けてもよかったのでは?とつい思ってしまった。特に本巻は詰め込み過ぎ感が強く、通して読むのは、ちと辛い気が…とはいえ、他の人がいうように、収録された作品のレベルは高く、どれも読み応えがある。それだけでなく作風の多彩さも魅力的で、著者の早世が改めて惜しまれる。個人的には巻末近くの「トコ」連作のような軽めの作品をもっと読んでみたかったか。また、とりわけ印象深かったのは、Oヘンリーの「賢者の贈り物」を思わせる「最高のプレゼント」が何とも言えず切ない。
2024/03/14
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