物語は人生を救うのか (ちくまプリマー新書 326)
物語は人生を救うのか (ちくまプリマー新書 326) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
前著に引き続き、現実を物語として認識すること、そういう形式でしか認識できないことについての論考である。否定的側面ばかりではないが、何らかの情報に出会ったときに、「それ本当?」と問い返す程度には、冷静であったほうがいいとは思う。「一般論」は迅速に処理できて、便利なツールかもしれないが、他の可能性が見えなくなってしまう欠点をつねに考えにいれておく方がいいと思う。ふだんから、何かおかしいけれど、なかなか言葉で言い表せない事柄があったのだが、本書でその正体を明らかにしてもらった。195~6ページあたりがそれ。
2022/03/05
トラシショウ。
「人間は現実(の話)と嘘との区別がつかない事なら幾らでもありますが、現実(の話)と虚構の区別がつかない事はほぼありません。なぜなら、まず先に「これは現実の話ではなく作り話である」と言う事を納得してから読む(観る)ものとして作られているものをこそ、虚構(フィクション)と呼ぶからです」。積読消化。とても難解で、個人的にはかなり苦戦した。物語(ストーリー)、フィクション、真実と「本当らしさ」、偶然と必然等を主軸に、前著「人はなぜ物語を求めるのか」を基本とする人と物語にまつわる応用編。(以下コメ欄に余談)。
2019/12/15
踊る猫
もちろん千野帽子の本だから書物について触れられた部分もまた面白いのだが、個人的にはあまり彼が見せることのない個人のトラウマを語ったところが印象に残った。そこから著者は自分のトラウマや罪責感を素材に、正義を語ることの困難さを綴っている。これ、ソーシャルメディアで正義感をふりかざし暴れる類の人に読んで欲しいところであると思った。一面的な正義で人を裁くこと、自分を断罪することの困難さを解毒する作用があるのではないかと思ったのだ。その意味では前書に引き続き真っ当な「自己啓発書」として読まれるに耐え得る本であるはず
2019/08/20
きいち
何かを体験したり、これまでの自分とは何か言葉にしようとしたとき、否応なく使わざるを得ないのが物語。書名の問いに著者は直接答えはしないけれど、もし、常に一つの正しい物語を求めてしまうのなら答えはNO。一方で、いまのこの場、この感情を解説するためだけの物語を紡ぐのであれば、著者が自らの祖母との事件で語ったようにYES…。◇物語から自由になれと言われても無理、なら、とりあえずの物語を数多く紡げるようになること。バリエーション豊かに手持ちの物語を享受することって、じつはとても意義深いことなのかもしれない。
2020/08/11
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
「自分に罪悪感を感じさせてくるものからは全力で逃げろ」 本棚キープ決定。
2019/05/16
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