つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書)
つむじ風食堂と僕 (ちくまプリマー新書) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
「つむじ風食堂の夜」に続いて読んだ。プリマー新書の装丁をしておられたことは、記憶から飛んでいた。200冊目の記念で装丁者自身の著書を出したとか。12歳のリツ君が、つむじ風食堂で耳をかたむける、さまざまな仕事の話。この本はひょっとしたら中・高校生に未来を考えるヒントになれば、という意図があったのかもしれないが、大人が自分の仕事の意味をふりかえることができる、オアシスのような本なのかもしれない。
2019/05/20
pino
12才だった私も路面電車に「むかし」を感じてた。リツ君と違って、漠然と生きていたので、将来の仕事なんて考えもしなかった。周りは大人だらけだったけど自分から「仕事は何ですか」と訊くこともなかった。大人から「大きくなったら何になるの」と訊かれることはあった。「小鳥屋さん」とか「デザイナー」とかその度、違うことを答えていた。「むかし」を思いながら読んでると飛ぶ様に最終ページに。タモツさんみたいに踊るように仕事をこなすのは気持ちいい。12才の問に答える大人たちに会いたくなったら、電車に乗るように、この本を開こう。
2013/10/01
kanegon69@凍結中
大好きな月舟町シリーズの番外編。リツ君がつむじ風食堂に通って街の人々に仕事についての話をする。これがなんとも心地よい。肉屋さん、豆腐屋さん、果物屋さん、魚屋さん、文房具屋さん、、沢山の人の職業観をリツ君を通じて聴く。吉田篤弘さんの文章は詩的でもあり、余韻もなんとも気持ちよく感じてしまう。そして仕事とは何か、なんて自分もリツ君に質問されたつもりで考えてしまった。月舟町三部作の面々も出てきてファンには嬉しいスピンオフ。また是非月舟シリーズの一作を期待したい。休日の午後にはぴったりの爽やかな一作でおススメです!
2020/05/30
KAZOO
「月舟町三部作」のスピンオフ作品のようです。このシリーズはまだ「それからはスープのことばかり考えて暮らした」しか読んでいませんが、関係なく楽しめました。リツ君が話してですが、様々な人とのやり取りがあります。筋らしいものはほとんど感じられませんが吉田さんが登場者の言葉を借りてご自分の言いたいことを言われている気がしました。あとがきが参考になりました。ちくまプリマー新書のこの巻200冊までのデザインをすべてクラフト・エヴィング商會で手掛けてこられたのですね。
2024/04/18
ちはや@灯れ松明の火
いつか僕は大人になる。路面電車ひと駅だけの旅は、ひとりで考えるための時間。ごとんごとん、将来に向かって進んでいく音だ。僕はどんなひとになるのだろうか。隣町の十字路の食堂は、いろんな話を聞くための時間。それぞれの仕事を持つ町のひとたちの声が渦を巻く。クロケット定食、ナイフにフォーク、「おいしい」のひとことを伝えたくなる。にぎやかでなんとなく静かな空気は、白いパンにはさまれた色とりどりの具材のよう。大人になった僕に、今楽しいですかと尋ねてみる。誰かが「おいしい」と喜んでくれるのが嬉しいんだよ、と僕は笑った。
2014/03/22
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