中野重治全集 第5巻 定本版
中野重治全集 第5巻 定本版 / 感想・レビュー
てれまこし
エリートとしての技能と教養を身につけたという証明書であった学歴の価値は下落してる。中野の世代においては高等教育はもはや退屈で無意味な作業でしかない。しかも学校で授けられる教養は中野のような地方の秀才を故郷からも周囲の生活者からも遠ざける。「高等学校の生徒なんというもの、その落第生なんというものが何だろう……一面が営みであるなかで、おれには営みがない。」マルクス主義はそうした余計者たちに社会との接点を与えるかに見えたが、中野は学生たちが革命意識を労働者に「注入」するという言い方に「引っかかり」を覚える。
2020/12/31
感想・レビューをもっと見る