山口昌男著作集 3 道化
山口昌男著作集 3 道化 / 感想・レビュー
白義
ダークナイトのジョーカーには、その行いの悪辣さにも関わらずというか悪辣さゆえに、圧倒的な開放感を感じるキャラだった。相変わらず情報量が異常過ぎて脳みそが沸騰しそうになるけどよくぞここまでといいたくなるくらい道化の痛快さ、根源性に迫った文化論。その混沌礼賛、トリックスター的精神の支持を考えると一番山口昌男らしい論考かなとも思える。ヘルメスからクリシュナ、インディアンの道化にそしてピエロまで、硬直した世界に混沌を吹き込み再活性化させる道化の魅力が詰まった本だ
2012/07/10
梟をめぐる読書
論の対象がアフリカ神話であれアヴァンギャルド芸術であれ、山口昌男の主眼が常に「トリックスター」的な精神の体現者に置かれていたこと、また氏の特異な文体の狙いそのものが体系立った学問的秩序への反抗と撹乱にあったことを考え合わせると、やはり最初に読むべきはこの巻だったかもしれない。ここでの著者は、インド神話の世界からシェイクスピア喜劇、はたまたアフリカ民族文化の習俗まで、あたかも遍在する〈眼〉のようにして無数のジャンルを越境しながら、「道化」(=トリックスター)のもつ属性と魅力を徐々に明らかにしていく。
2012/12/31
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