とりつくしま (単行本)
とりつくしま (単行本) / 感想・レビュー
匠
死んだ自分が一度だけ現世でモノに憑依できる権利を与えられ、遺された人の身近なものの視点から想うあれこれ。憑依するのは夫が愛用していたマグカップだったり、扇子や日記、マッサージチェアやリップクリーム、カメラのレンズや名札などなかなか奇想天外な11篇の短編と番外編。亡くなった人は子どもや学生、親や祖母など世代も様々で、11篇それぞれに主人公の口調そのものになりきったキャラで書き分けられているのが、とても素晴らしかった。せつなく泣けたり笑ったりキュンときたり、初読みの作家さんだったが、読んでみて良かった。
2014/03/14
紫 綺
切ない!切なすぎる!そしてほんのりと温かくなる。死後、無機物に取り憑けるという設定の短編集。「とりつくしま係」ってまるで宇宙人(笑)。
2016/12/09
おかむー
亡くなったひとびとが“とりつくしま係”によって物に宿る物語を描く短篇集。書き手によっては言葉が生きている人に聞こえて心残りを昇華させる方向になるのだろうけれど、この作品の場合は見えるのみ思うのみで言葉が伝わることはない。とりついたひとびとはなすすべなく生前に大切だったひとのその後を見守るのみ。『よくできました』。それぞれ物語は、なにもできないもどかしさや生きていたときには知らなかった面を見せ付けられる物悲しさが響くけれど、それがまたいい意味での諦めを含んだ暖かい結末を際立たせている感触ですね。
2015/06/15
ユザキ部長
人は死んでしまうと「とりつくしま係」によって何かモノに「とりつく事」が出来るそうです。でも決して生きてる人や動植物には「とりつく事」が出来ないそうです。なぜなら生と死は別々で「とりつくしま」がないからです。僕は何に「とりつく」のかな?
2015/11/01
コットン
死後、この世に未練がある人のために、物にとりつき、残された人との時間を共有する話。冒頭の『ロージン』がいい:死んだ母は中学球児のがんばりすぎる息子(ピッチャー)の中学最後の公式戦にロージンの中の粉となる。潔く短い再会が心に響く!!
2013/05/31
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