世の中は偶然に満ちている (単行本)
世の中は偶然に満ちている (単行本) / 感想・レビュー
踊る猫
思えばそれこそこの本の出だしで赤瀬川原平自身が書くように、あらゆるものごとは「偶然」によって出くわすものだろう。「夢」と「偶然」という2つのキーワードを基に記されるこの断片的な記述は、いま一度この世界の持つそんな危うさをあぶり出す(何せ、こんなにも至るところにファニーな「偶然」や「夢」の端緒はあふれているのだ)。だが、読み返して思うのは赤瀬川原平の筆致がオカルト的な臭みを感じさせることなく、あくまで平静さ・冷徹さを保ったまま事態をまっさらな感受性で眺めて受け容れようとしているそのオープンな姿勢の凄味である
2024/02/04
踊る猫
「反偶然」というパワーワードが目を惹く(赤瀬川のオリジナルの概念ではないが、しかしこのような言葉とめぐり会うのもまた偶然を呼び寄せる才能の賜物だろう)。それは「偶然」をなんら神秘的なものとして過度に美化することなく、ただスプーン曲げのようにありうることとして受容する姿勢だろう。いわば世界に開かれた態度。この本の中ではファニーな偶然や夢日記が開陳される(たまたま人と会った、程度のものもあるが)。世界に開かれた、世界をまるっと肯定する姿勢に支えられたそれらの記述はとても見通しがいい。私も愛すべき偶然を求めたい
2022/01/26
ほじゅどー
★★★★この世の中は偶然に満ちている。都市はできるだけ偶然を排除し、自然を排除している。でも町は永遠でなく、老化してゆるんだ所から、追い出された偶然、自然がじわじわと進入してくる。カメラを手に歩いていると一番面白いのはそこだ。人間はふだん町の必要なところしか見ていない。でもカメラと歩くと人は現代人から狩猟採集民に遡る。必要でもないところに目が行き、思いがけないものを見つける。想定外のものが新鮮に映るのだから、不思議なものだ。
2016/07/31
阿部義彦
赤瀬川原平さんの死後丁度1年目が発行日となってます。死後に奥様の尚子さんがみかん箱に入っていた手帳の束を発見して、偶然日記なるものを紐解くとそこには、何気ない日々の出来事と偶に丸で囲んだ記号とともに偶然の出会いや出来事が記録されてました。それ等を松田哲夫さんが編集して南伸坊さんが装丁して、老人力をだした縁の筑摩書房から出版されるなんて、あの世の赤瀬川さんも喜んでらっしゃると思います。赤瀬川さん自身が自らの大回顧展を目前にしてお亡くなりになった事、亡くなる二日前につげさんから電話があったなんて!因縁かな?
2015/11/06
ぐるぐる244
図書館 「ものごとはすべて偏ることを常態としており、まんべんなく散らばるのはむしろ特異なことだ。」「それがある一時期に重なる第二の偶然は何か、それを偏らせる何らかの未知の力が働いているのだろうか、と不気味的に考えるところから、ほんのりと神秘思想への接近が始まる。しかしそれは人間の秩序志向がもたらすものらしいのである。」
2016/05/28
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