おまじない (単行本)
おまじない (単行本) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
8篇からなる短篇集。主人公はそれぞれに違うが、巻頭の「燃やす」では小学生、続く「いちご」では中学生へとしだいに成長してゆき「ドブロブニク」では44歳。最後の「ドラゴンスープレックス」では再び中学生に戻って幕を閉じる。いずれも女性の一人称語りであり、それがとてもうまく機能している。男である私も第1話から即座に感情移入していけるのだから。この作品群はそうして主人公に寄り添って、彼女の目で世界を眺めて行くのがいいようだ。とりわけ心に響いたのは「孫係」、「オーロラ」、「ドブロブニク」。他の作品もいい。
2022/04/02
starbro
西加奈子は、新作をコンスタントに読んでいるマイブームの作家です。おじさん達の素朴な言葉が、魔法のようなおまじないになる連作短編集。著者のイラストも含め、どの短編も好いですが、オススメは、「孫係」と「あねご」です。
2018/04/05
ウッディ
ザラッとした読み心地を残す8つの短編集。限りある枚数の中で、主人公の背景を描き、心の中のモヤモヤした物をえぐり出す描写は、さすがと思わせる。唯一、「孫係」だけは、西さんらしくない(っと言っては失礼だが)すっきりした読後感で、一番好きでした。本心を隠して振る舞う事は、決して悪い事じゃない。相手の気持ちを思い遣って、そんな風に振る舞えるのは優しさなんだという祖父の教えで、生きることが楽になった読者は多いのでは‥。自分の気持ちに折り合いをつけられない時、自分も何かの係をやってると考えようと思った。
2018/06/24
うっちー
私は男ですが、女性視点ではおそらく意味深い短篇集なのでは
2018/03/15
風眠
ほんの少し心を柔らかくできたらなら、らくになれるのに、と思う。けれど長い年月をかけ培われてきた心は、自分の頑固さを手放すことをそう簡単には許してくれない。弱音を吐けない、誰かに頼ることもできない、自分というものの厄介さ。どうにもならないと諦めてみても、それでもやっぱり諦めきれなくて、矛盾する感情をもてあましている。心のずっと奥深く、大事に大事に置いていた頑固さの箱。その箱をひょいっと持ち上げて「もうええやろ?」って、西加奈子が言ったような気がした。何となく、もういいかなって、らくに生きてもいいかなって。
2018/04/05
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