ポラリスが降り注ぐ夜 (単行本)
ポラリスが降り注ぐ夜 (単行本) / 感想・レビュー
buchipanda3
モノクロ写真の装丁がいい感じ。落ち着いた感じだが得体の知れない雰囲気もある。読んでみると性的マイノリティの単語が正体不明のように並んでいた。でも多様なセクシュアリティを持つ日中台の女性たちのリアルな物語に引き込まれていく。彼女たちが自分でも説明できない正直な気持ちを純粋に模索する姿に惹かれたから。彼女らの苦しみはまちまちで単純にカテゴライズなんてされない。だけど夏子の「女の子でしょ」の台詞がストンと落ちた。私は彼女たちの心情の全てを理解できていないと思う。それでも彼女らの物語は心に残したいと思った。
2020/03/13
ゆのん
【NetGalley】連作短編。新宿2丁目にある女性専用店『ポラリス』に集う女性達の物語。『女性』と言っても『ポラリス』に集う女性達には様々な背景や過去がある。レズビアンやアセクシャル、ノンセクシャルやバイセクシャルなど、この本で初めて知った『性別』もあった。世の中は当たり前に『男』と『女』に分かれている性別だがその性別から外れてしまう人達の肉体的、精神的苦痛は計り知れないものがある。『差別』というものは自分とは違うものを異質とみなす訳だがその残酷さは読んでいて苦しくなる。60
2020/03/11
そら
新宿二丁目にある「ポラリス」というバーを舞台に、性的ジェンダーの様々な認識についての物語たち。生まれ持った染色体の性とは異なる認識を持っていたり、性的な感情がない人だったり、今は様々なカテゴライズでそれぞれにカタカナの名前がつけられている。人間の個性はそれぞれは違うのだが、名前がつけられることで存在を認められたと意識できるというのはなるほどと思った。あとがきまでが物語の一端で、事実に基づく歴史や人物も登場する。新宿二丁目がそのような歴史で今に至るのは興味深かった。私はどこにカテゴライズされるのだろう?
2022/08/29
いっち
ポラリスとは新宿二丁目にある女性専用のバー。バーの店主、バイト、客の7人が語り手となる。あとがきに作者自身が登場し、ポラリスを訪れる。実際に存在するバーなんだと思ったが、「このあとがきも小説の一部です」という作者の言葉が気になり、調べたら架空の場所だった。女性専用のバーなのに、ポラリスに行けなくて残念だと思う一方で、魅力的な場を創造する作者の力に圧倒された。さらに、「同じ言葉が後になって別の意味を持ち合わせてくること」、「遺伝子を残すことへの考え方」など、これを書かなければならないという作者の熱を感じた。
2021/06/02
konoha
アイボリーと濃紺が美しい装丁。新宿二丁目のレズビアンバー「ポラリス」をめぐる人たちを書いた短編集。品があって、きれいな文章。日本語、台湾語、中国語が交じることで生まれる違和感が面白い。ポラリスの店主、夏子が主人公の「夏の白鳥」が1番好き。物語がシンプルで、シドニーの場面が鮮やか。ポラリスの描写は最低限で、店内はミニマムな印象。短編集全体は長く、重く感じる。新宿という、大きなビルの隙間に小さな居場所がある街。二丁目にも、家にも帰れず、新宿駅に向かうのが印象的。新宿を書いた小説としても魅力がある。
2021/07/13
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