百合子さんは何色: 武田百合子への旅
百合子さんは何色: 武田百合子への旅 / 感想・レビュー
どんぐり
武田泰淳の担当編集者でもあった直木賞作家が、百合子さんの亡くなった翌年の1994年に出版した本。泰淳夫人であった頃の「ドアの奥から目を凝らしている自閉症の少女のイメージ」と、最後に会ったパーティーにおける「抱いている愛猫を誰かに奪われた少女のごとく弱々しい虚ろな目」の2つの残像からこの表題の問いを始める。そして、いくつかの百合子さんの顔を見せてくれる。喫茶店ランボウの女給時代、鈴弁事件、妊娠と堕胎、泰淳夫人としての25年、『富士日記』にみる文章の才能と十代の頃に書かれた詩。→
2021/11/05
まど
こんなに苦労をした人だとは思わなかった。わたしも百合子さんの小説読んでみたかった。
2012/09/02
ラム
「富士日記を読む」に続いて 編集者として身近に接した村松が、没後に改めてその実像に迫る 最後に会った時の弱々しく虚ろな表情と埴谷雄高の弔辞の「全的肯定者」という輝くイメージとのギャップ 泰淳が百合子を作ったという見立ては否定されて久しいが、泰淳没後俄かに本来の自分をよみがえらせ、「日記」で天賦の才能が世間に供された その才能は如何に培われたか 村松は女学校時代の同人誌の投稿作品に詩人の魂を見出す その魂は泰淳にも揺るがなかった 娘に遺言で全て焼却するよう託したトランクの中には詩人の魂が入っていたのではと
2022/04/30
まりこ
知りたくなかった、書かなくてもいいんじゃないかと思う話が始めの方に2つ。若い時の詩文があって良かった。全肯定的で詩人の魂の人。苦労はしていたが、強い人で好き。文章も視点も行動も凄い人柄が出ていて百合子さんならではだと思う。
2019/04/27
すぎの
天衣無縫の随筆家で泰淳の妻であった武田百合子についての追悼記。64歳の若さで亡くなった翌年の刊行(この夫婦はどちらも若くして亡くなったんだなあ)。すばらしい文才を持ちながらも、戦後の日本文学を支えた作家のひとり・武田泰淳の影役に徹した妻としての彼女の姿勢に、おどろくほどの感動と敬意を感じる。百合子さんが高校時代につくった同人誌に掲載されたという詩とか、泰淳存命の時分に同人誌の友人にあてた書簡などの抜粋なんかも載っていてめっちゃお得な一冊だ。室生犀星のほめた『去年の秋』という詩はどこかにメモしておくつもり。
2013/06/04
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