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雨の日はソファで散歩

雨の日はソファで散歩

雨の日はソファで散歩

作家
種村季弘
出版社
筑摩書房
発売日
2005-08-26
ISBN
9784480814746
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雨の日はソファで散歩 / 感想・レビュー

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アキ

今は亡き作家が自選したエッセイ集。敗戦直後の銀座で働いていた思い出から、自身の住まう真鶴にかつて同じ地に住んだ与謝野晶子の歌への思いなど。江戸の四宿とは東海道の品川、中山道の板橋、日光街道の千住、甲州街道の高井戸、五街道の出発点の日本橋から高井戸まで四里八丁。途中に中宿を設けた。だから新宿という。元禄十一年内藤新宿には遊郭がにぎわった。銀座煉瓦地が創設される明治五年までの銀座は、京橋の場末にすぎなかった。江戸から明治、戦後に至る東京の都市の変遷が興味深く読ませる文章。クラフト・エヴィング商會の装幀。

2021/03/30

ホークス

2004年没の評論家。帯に「最後の自選エッセイ集」とある。終戦直後の銀座で体験した街の荒廃ぶり、米兵の横暴ぶりが生々しい。あらゆる手段で生き抜こうとする女たちと、壊れたプライドもろとも沈潜する男たち。語りはクールで乾いている。著者も老人らしく、過去の恨みにこだわり、不味くなった豆腐を嘆き、若者の無知に呆れる。でもどこか突き放している。大事なのは思考の自由。世の中よりも自分はどうしたいか。著者は最後まで好き嫌いに従われたようだ。そう言う私も、自分の理想を著者に託しているだけだろう。それもまた良い。

2020/08/23

ばんだねいっぺい

 「アームチェア・トラヴェリング」に何でも名付けたもんがちだなと思い、「顔文一致体」に笑う。西向きの窓がある外国の部屋に泊まり、すみれ色のひかりを浴びてみたいと思った。

2019/02/11

あ げ こ

賢者か、仙人か。種村季弘は凄い。遁世の感じ、あらゆる美を、愉しさを味わい続けた果てのそれであって、何と言うか、森の奥深くに佇む年代物の木のよう。化生の長のよう。宝も埃も妖も埋もれる蔵のよう。ずっしりしていて、静かで、穏やかで、品があって、けれどどこか、ゾクゾクとするような艶を漂わせていて。艶と言うものは年季が入ると妖気じみたものになると言うか、一つの凄みと化すのだな、とつくづく思う。穏やかなのに隙がない。言葉は鷹揚だけれども、その眼光は鋭く妖しい。円熟の審美眼。自分には見えぬものを教えてもらう楽しさよ。

2017/10/06

ネロリ

軽快な語りが心地よい、種村さん最後のエッセイ集。魅力的なタイトルと装幀に惹かれ、思わず手に取った。戦後の街の様子、交流のあった作家、芸術家などの思い出話から豆腐への熱い想いやお酒についてと、肩肘張らないけれど拘りが見えるお話の数々。あとがきまで含めて美しい本。残り20ページ程となったところで、雨が降ってきた。「こんなときにはソファに寝ころがって、行きたい町に本の上でつきあわしてもらうのが分相応というものだ。」

2011/10/09

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