徘徊老人の夏
徘徊老人の夏 / 感想・レビュー
ホークス
2004年没の評論家、晩年のエッセイ。考察に超然とした品がある。石ころを拾う癖について考えた一節。人の意図の働かない自然石は、握りしめると気が楽になる。宝石の類は価値を押し付けて来るから、握る石は何でもない石にかぎると言う。不変の真理や建前など信じない自由人の見識。全ての人が等しい重さを持つ以上、自分の執着は諦め、慰めは澄明なものに見いだす。古いようで新しい境地だ。抑制されたシニカルな視点も面白い。貧乏は相対的概念であり、情報によって欲望を強化されて、初めて切実になると言う。身も蓋もなくクールで著者らしい
2020/08/16
AR読書記録
板橋区美術館「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」を見た流れで、しばし種村季弘強化期間とする予定。まずは生活、あるいは人となりが見えるエッセイ集。タイトルに「老人」とあるけど、六十代前半に出てる本、まだまだ老人じゃないだろう、と思ったがわりとちゃんと老人してた。それは“達観”的な意味であって、“老耄”じゃあないんだけれども。広い視野とフトコロはより深さを増す、歳の取り方。ところで展覧会でも鬼海弘雄の写真があったけれど、ほんとうにこういう街の似合う人。表紙をみておもう。
2014/10/06
猫風船
タネラムネラ晩年のエッセイ集。表紙の写真がいいですねえ。文庫版の表紙も捨てがたいけれど...
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