太宰治
太宰治 / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
有名な出会いの件から始まり、師弟・友人・作家という関係を踏まえた人間・太宰治の考察と回想。著者の描いた太宰の”赤鼻”、『富嶽百景』における著者”放屁”論争など、愛情溢れる掛け合い多々。梅ヶ枝での”水の音”は笑うしかない。一方、「太宰の下駄の跡」に滲む著者の無念さ。熊笹vs.根曲竹の話も印象的。タラレバは禁句も、石井氏との関係が異なったものであれば、転機となった可能性を感じざるを得ない。各作品執筆当時の太宰の近況を補足する『解説』も必見の価値あり。頭にとどめて太宰作品を楽しみます!
2018/07/12
ヒロミ
太宰の師井伏鱒二の回想録。色々なところに収録されたのを集めたらしく内容が重複していたりもする。太宰のことを書いていながら、井伏さんの曲者ぶりも行間から伺えて面白く読んだ。檀一雄の名前を堂々と「園くん」と書いてあるが間違えたのか匿名にするつもりで書いたのか…。自分の日記はつけていないが太宰の行状は日記につけていたりお疲れ様です。散々世話を焼かされたのに遺書に「井伏さんは悪人です」と書かれるとは。井伏さんにとっては想定の範囲内の結果だろうか。津島家から付け届けとか貰ってたのかな?無償だとしたらいい人すぎます。
2015/08/30
わった
太宰治に関する、井伏鱒二のエッセイ。井伏さんは悪人ですという一文が離れないが、悪人どころかよく世話していたのがわかります。この小説を読んで変わったのは、太宰と最期を遂げた女性の印象です。同じ墓に葬られずとも聞いていたし、狂言自殺が失敗したとかいろいろ噂もありましたが、私はどこか信じられませんでした。しかしこれは…と思いました。まだグッドバイが大好きで何度も読み返しているのですが、この編集者の言葉は太宰の言葉そのままなのではないか?と思っていた予想が当たって嬉しかったです。
2016/06/07
鳩
井伏鱒二から見た太宰治。太宰の小説では当然ながら太宰視点なので、他者から見た太宰というものはとても新鮮でした。井伏さんから見た太宰は、従来の印象とさほど変わらないものの子供っぽさを感じました。何というか、憎めない愛されキャラです。事実、色んな人に支えられてますしね。太宰の表面上は快楽を装い内面では悲しみを覚える性格、擬似社交心か..。人間失格でありましたね。太宰はそういう日本人っぽい生真面目で我慢強い面ももってる人です。解説(その時期にどんな状況で執筆したか)も豊富で、1つの太宰作品のようでした。
2017/03/05
冬見
井伏鱒二が太宰治について記した随筆、解説などをまとめた一冊。根曲竹の話やお古の着物の話なんかは太宰の性質があらわれている。太宰の死後に書かれたものがほとんどだからか、東京転入以降交際が遠ざかったからか、一定の距離を保った淡々とした筆致で語られている。(井伏の文体がそもそもこういうかんじだったような気もする。)死の前後については井伏自身が語っているように交際の途絶えた時期のため、作品はともかく私生活については伝聞したものを井伏のなかで繋ぎ合わせたものであることを念頭に置く必要がある。
2022/03/03
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