物騒なフィクション: 起源の分有をめぐって
物騒なフィクション: 起源の分有をめぐって / 感想・レビュー
hitotoseno
ラシュディ著「悪魔の詩」が巻き起こした騒動を、「起源の分有」という精神分析的な観点から論じる本著は、文化の対立に収まらない幅広い理論的視野を備えている。小説の出自、西欧が起こした根本的な革命、神の死に際した人々の流謫の足跡、宗教と政治の密接な関連……わずか80ページほどの分量で人類の病理を明らかにするばかりか、エーコやクンデラといったビックネームまで所詮歴史を知らない作家だと暴露してしまうこの剛腕を目の当たりにしては、どうしてこんな快著が絶版状態にあるのだろうと出版社に非難の目を向けてみたくなるものだ。
2013/02/18
なっぢ@断捨離実行中
佐々木中や西谷修の影響で。『悪魔の詩』事件へのエーコ、クンデラらの「ただのフィクションに本気になるなよ」クールでモダンな相対主義的な反応(これは「ネタをネタと見抜けない――」的な2ちゃんねらーの心性と相通じる)に対して、著者はバタイユやルジャンドルなどを引いて「危険じゃない文学なんてそもそも文学じゃねえし!(意訳)」と熱い啖呵を切る。復古主義にも近代主義にもよらない第三の道(起源の分有)をとる著者だが、一神教を持たない日本人はどのようにこの「新しい世界史」に参与できるのだろうか。
2016/06/08
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「起源の物語を操作するほど、転覆行為の雄弁な兆候はない。というのも、このような物語はつねに至高性の演出であり、そこで舞台にのせられるのはまさに起源の物語によって何ものかとなった無の至高性なのだから。ところで、それに触れるためには、必ずやなにか別の新しい至高性を援用しなければならない(中略)その場合その至高性は、サルマン・ラシュディの次のような物言いのなかで名指されているものでないとしたら何だろうか、「・・・・・・この(大いなる物語に関する)権力は万人に等分に属していなければならない。」つまりこれは、起源に
2015/10/21
_udoppi_
表現の自由について、その起源から考えるために読んだ
2022/07/02
葛
1994年12月20日初版第1刷発行 著者:フェティ・ベンスラマ 訳者:西谷修 発行者:森本政彦 発行所:株式会社筑摩書房 印刷:明和印刷 製本:和田製本 装丁者:木庭貴信(コズ フィッシュ) 協力:岩川哲司、鵜飼哲
2019/06/04
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