言葉を失ったあとで (単行本)
言葉を失ったあとで (単行本) / 感想・レビュー
しいたけ
私はいま、言葉を失った状態なのだなと思った。あるいは元から語れる言葉を持っていなかったのかもしれない。借りてきた付け焼き刃の言葉は通用しないことに、この歳でようやく気がついた。仕事のことで悩み抜いて手にとった。上間さんの本をまだ読んでいなかったのが勿体なかったと思うほど素晴らしい人だと思った。言葉を使うことを生業とする信田さんと、手を使いサポートしようとする上間さん。被害者の傍でうずくまって何も出来ない私は、あと何年したら言葉を使えるようになるのだろう。
2022/05/25
おたま
社会調査の専門家である上間陽子と、臨床心理士・公認心理師である信田さよ子との対談集。基本的には上間陽子の方が社会調査で経験したことについて、信田さよ子に基本的な見方・考え方を問うという形。DV、虐待、性被害等について、現場からの上間の問いも凄まじいが、それに的確に答えていく信田の懐の深さも凄い。また、信田の学生運動の頃から、専門家権力批判、臨床心理学内での当事者からの告発等を経て日本心理臨床学会の再生までの部分は圧巻。信田さよ子というのは、その後も様々な体験を通して多くの抽斗を獲得していったようだ。
2023/02/24
ネギっ子gen
アディクションの第一人者と、沖縄で若い女性の調査を続ける『海をあげる』『裸足で逃げる』の著者が、「聞く」ことの現実を具体的に語りあった対談集。読書案内あり。ご本人が言うように、臨床心理士・信田さよ子氏が教育学者・上間陽子氏にカウンセリングを受けた本ともいえる。この題名に絡め信田氏は「まえがき」で、このように書く。<カウンセラーであるということは、言葉が武器であるということだ。武器なくして、ひと時も生き延びることなどできない/言葉は商売道具なのである。言葉なくしてカウンセラーという商売は成り立たない>と。⇒
2022/02/18
ほう
2020年11月に行われたオンラインでのトークイベントをきっかけに、計6回の対談(最後は対面)が書かれている。専門的な内容や言葉も多くあって、難解な所も多かったけれど、第一線で活動されている二人の非常に中身の濃い対談だと思った。どの章を読んでも重い。重いけれども、これは私たちの生活とも関わりがあり、ひとつの警鐘でもあると思う。読書案内も掲載されているが、これらの本も読みたいと思う。上間さんが今取り組んでいる沖縄での「若年ママの出産を支える宿泊施設 おにわ」に思いを馳せる。
2024/03/11
spatz
海をあげる が衝撃的だったので、彼女の以前の著作をリクエストしてあった。 海をあげるが賞をとった時の受賞スピーチ、静かな佇まいの静かな語りと共に、 心に残るものでしたね(おすすめです) 地元図書館の蔵書になく、道立からの相互貸借で、忘れたころに手元に来たのだが。が。内容が凄まじい。 身につまされるところが多々あった。色々ありすぎてまとめるのは難しい。 乖離 というのはどんなことでも、過酷な体験をしたものにはある、と感じている。体験したことがある人は、わかるだろう。指摘にはうなづかされることが多い。
2023/01/23
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