タナトスの子供たち: 過剰適応の生態学
タナトスの子供たち: 過剰適応の生態学 / 感想・レビュー
owlsoul
「やおい」とは女性のために描かれた男性同性愛の物語。なぜ、男性同士なのか。それは、少女漫画というファンタジーから卒業を迫られた女性たちが、それでもなお男性主義社会における「商品価値としての性」を拒絶するための物語だからだ。自己の内面とは無関係の性的な魅力で値踏みされる男女の恋愛に失望し、男性同性愛というファンタジーの中に本当の愛を見出そうとする「やおい」。少女漫画が性以前の恋愛であるなら、「やおい」は性を無視した恋愛なのだ。著者は「やおい」分析を通して、競争の外にも人の居場所がなくてはならない、と主張する
2018/11/24
花
「やおい」文化について。女性が成長に伴う「女臭さ」を嫌う一方、不可侵な存在(永遠の「少女」「少年」)に自分を投影することでカタルシスを獲る。21世紀以前に書かれた本で、ここまでボーイズラブに言及した作品は他にないのではないか。良書である。所謂ブロマンスとBLの違いにもう少し言及してほしかったな。加えて昨今のBLの多様化(おやじスキーや擬人化を伴わないモノ×モノ)について、また中島さんの研究が読めたら嬉しい。
2014/10/28
せと
「やおい」は変態性癖を持つ女子以外には関係ないもの"ではない"とやおい文化創始者である著者は語る。やおい文化についての考察の後に、それを切り口とした社会全体に対する考察が続く。やおい=少女が傷つかないための共同幻想の箱庭、子孫を遺せないという事実が「それでも君を選ぶほど愛している」と翻訳されるやおい世界とHIV下での恋愛との相似、当然とされた「性・愛・生・死」の価値観の揺さぶり、など興味深い指摘に富む。本書出版から既に15年が経っているが、今読んでも全く古さが感じられない。著者の鋭い先見の明に脱帽。
2013/07/24
柄子
腐るのは健康な反応。日本人て不思議面白い
2012/01/13
まんまるまる亭
BLは、栗本薫の「真夜中の天使」に始まるらしい。雑誌JUNEも、栗本薫の後輩が栗本薫と相談して、始めたものらしい。本書は、栗本薫が十年来に渡る、やおいを巡る考察をまとめたもの。やおいは、元々、少女たちが自分たちの居場所を作るための戦いの結果、生まれたものらしい。ただ、やおいが人口に膾炙した結果、その性格も、当初のものから、大分、変質してきているのだとか。
2014/03/18
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