アメリカ音楽の新しい地図 (単行本)
アメリカ音楽の新しい地図 (単行本) / 感想・レビュー
しゅん
テイラー、ケンドリック、BTSなど、アメリカで大きな成功を遂げた作家たちの表現が、どのような歴史的背景とともに成り立っているか。簡潔で淡白な書きぶりのようで、起伏と魅惑がある不思議な文章。『アメリカ音楽史』で見せた濃厚さがうまく作用しているのか。ユダヤとラテンの子、ブルーノ・マーズを米西戦争の末裔として、模倣による抑圧文化への対抗として見る論が面白い。アジア=アフロの関係の描き方に顕著だが、差別/被差別、権力者/民衆などの構造が実際には複雑に揺れ続けているというのが著者の立場。
2022/06/23
Masaaki Kawai
曲それ自体だけじゃなく、本人のルーツや信条、シーンや社会の背景があることで、曲の厚みや強度が増す。それを知ることができる、こんな本、大和田さんありがたい。何でも政治性があればいいってわけじゃないけど、日本の曲でここまで厚みをもって語れるものがどれだけあるかなぁ…もちろんアメリカでも語るに足るものは少ないやろうけど、やっぱり世界をマーケット対象にしてるから強度もついてくるよね。羨ましい。ビルボードの歴史や100年前のスペイン風邪パンデミック、BTSがブレイクした背景が特におもしろかった。
2022/05/15
ますりん
名著「アメリカ音楽史」の著者の新刊。最近というかここ10年の音楽にひどく疎く、帯に書かれたアーティスト名見てもBTSくらいしかわからないけど、大和田さんの本はそれでも読まねばなるまい。 やはりアメリカの音楽シーンと、トランプの台頭は(肯定にしろ否定にしろ)切っても切り離せないのがよくわかる。特にケンドリック・ラマ―とかが気になる。なにより音楽のランキングシステムの項と、アメリカにおけるBTSをはじめとするエイジャン・インヴェイジョンの項は、非常にためになるので必読。
2022/04/10
大泉宗一郎
トランプ政権、コロナ禍、BLM運動等で揺れ動いたアメリカで、アーティストたちが(テイラー・スウィフト、ケンドリック・ラマー、BTS等)分断の裂け目でどのような音楽とメッセージを発信し、それらがどのように形成されたのかを、名著『アメリカ音楽』の著者が解きほぐす。現象としてのアーティスト活動を、個々人の背景と歴史・政治のきめ細かな文脈の中で相対化することで、新たな解釈と価値が付与されてゆく過程は非常に面白い。膨大な文献と、留保付きの解釈による確かで優れたバランス感覚で、適格な地図の役割を果たしてくれる一冊。
2024/10/10
K.C.
billboardチャートに長年親しんだ自身(今は中村真理さんの番組が視られないので少し遠ざかっている)として、興味深かった。普段は聴いているだけだが、こういう分析は日本の音楽ではあまりなされない。もっとプロテストソングがあってもいい気がする。
2022/03/12
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