コリーニ事件
コリーニ事件 / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
きっとドイツという国柄(背景)があってからこそ、こういった作品が生まれるんだとうなぁと感じました。老人実業家が殺され、その弁護を引き受ける新米弁護士「ライネン」、被疑者「コリーニ」はいっさい動機を語らずに黙秘を続け・・・。事件の真相を追っていくうちに、驚愕の事実が明かされるコトに。第2次世界大戦下のドイツという国の歴史、ユダヤ人の話、ヒットラー云々など、そういった暗黒史がクライマックスに怒涛の勢いで語られるその熱気とスピード感が、とても200頁超のボリュームとは思えない重量感とともに読者を魅了します。
2016/02/20
ブランドのアーメン
戦争はいつまでも終わらないことを痛感させられる名著。一見して関係のなかった加害者と被害者が過去と繋がりナチスの犯罪と結び付いていく。終わらない報復の連鎖と呆気ない結末は悲しかった。
2015/12/13
ケンイチミズバ
殺害方法から怨恨であることが私でも容易に推察された。被告人コリーニの言葉、死者は復讐を望まない。望むのは生者だけだ。に弁護士ライネンはもとより読者の私にも深く刺さった。大学紛争の最中に秩序維持のため承認されてしまった法案の不備からナチスの犯罪行為が戦後15年で時効となった。たくさんのコリーニのような人々が忘れることのできない記憶に突き動かされたのだろうと思う。やるせないラストが悲しい。殺害の動機、真実が明らかになったことが作中のせめてもの救いであり、この作品が現実に国を動かしたことも感慨深い。
2017/01/04
たー
いわゆるミステリーとして読むと肩透かしを食らう(すごいトリックが潜んでいる訳ではない)。自身の祖父がナチの指導者だったという人物がこういう本を書くこと自体が意味があることなんだろう。
2014/06/28
キムチ
筆者はナチス高級幹部の孫、長い間刑事弁護士として活躍し、執筆するとクライスト賞を受賞。社会的地位が圧倒的に差のある関係での殺人事件。どう考えても減刑しか争う余地がない裁判の国選を引き受けたライネン。だが幼い日々の私情を絡めざるを得ない事態に展開して行く。ヨハナの「すべてを背負って行かないといけないの?」に答えて「君は君らしく生きればいいのだ」このセリフの持つ重さにクラっとした。薄氷上で踊り続ける者が自らを覚知することの重大さ。凍るような空気を感じる文体とヨハナの言動が印象的。最後の幕引きにドイツ的感覚が。
2014/01/22
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