愛の裏側は闇(3)
愛の裏側は闇(3) / 感想・レビュー
伊之助
良質の大河ドラマを見終わった印象。作者自らがモザイクの欠片と称する304章のエピソードが終わった。浮かび上がるのはやはり、アラブの風土や文化、政治状況に根差して普通に生きる多くのアラブ人の顔だ。だが一方でその顔は、社会的に認めることのできない愛を貫こうとする男と女は、文字通り命をかけざるを得ないというこの一点が象徴するアラブのやや料簡の狭い顔でもあった。これへの忸怩たる思いと同時に、物語の中心地ダマスカスを「世界一美しい町」と言う作者の、もう帰ることの出来ない故郷に対する郷愁が色濃く滲む作品だった。
2015/05/04
かもめ通信
信仰も思想も、愛も友情も、権力も金も、何もかもが不確かで信じることが出来ないとしたら、人はなにをよりどころに生きていけば良いのだろう。一組の若いカップルが愛だけを頼りに生きていく道を選んだが、多くの若者は今も彷徨い続けている。 それは決してかの国だけのことではなく、ひとつの物語の終わりは、すべての終わりを意味するものでもない。一気に読むのがもったいなくて、少しずつ読み進めていた物語のエピローグにようやくたどり着いたとき、読み終わったばかりなのに、すぐにでももう一度最初から読み返したくなってしまった。
2014/11/19
星落秋風五丈原
1巻未読で3巻読了。恋人達が結ばれるのかハラハラ。国際小説、政治小説、成長物語、恋愛物語、コメディタッチ、いろいろな要素を含んだ作品。最後まであの章訳だったとは。
2014/12/28
わたなべよしお
長い物語を読み終えた。実は最後に圧倒的な感動が訪れるのではないか、と期待していた。そのような感動はなかったが、ファリードたちの世界から離れがたくなっていた。物語が終わってほしくなく、いつまでも読んでいたかった。いつか、再読したい。それにしても、最終章は必要だったのだろうか。
2015/01/11
bakumugi
全3巻304章、読み切った…。シリアの歴史的・宗教的・政治的・民族的要素、サスペンス要素、復讐劇、多すぎる登場人物、、、どれをとっても盛り込み過ぎ!(個別エピソードとしては興味深いものが多いのだが)な気がしながら読み進めたが、読了してみると、すべてひとつの悲恋の物語の輪郭をかためるサブストーリーにすぎないことがわかる。贅沢すぎる。だが、あの地域なら一つの人生にこれだけのことが起きても不思議はないのかもしれないとも思う。中東地域を舞台にした私小説、他にもあれば読んでみたい。
2014/12/16
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