珈琲と煙草
珈琲と煙草 / 感想・レビュー
starbro
フェルディナント・フォン・シーラッハは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書はアイロニー&ブラックユーモアに溢れたショート・ショートの様な自伝的エッセイ集でした。 http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488011239
2023/03/30
KAZOO
シーラッハの作品はいくつか読んできていますがこれは従来のミステリーとは異なり、エッセイなどが中心のものでした。48の掌編(短編小説のようなものから、自分の内面をつづったものやあるいはメディアに発表したものなど)が延々と綴られています。どういう分類に入るのかはわかりませんが、読んでいて比較的すんなりという感じでした。日本のことなども結構書かれています。
2024/01/15
どんぐり
短いもので数行から長くて10ページほどのエッセイが48篇。煙に包まれたようなぼやけたものから目が覚めるようなものまで、シーラッハの多種多様な観察記録。彼が映画館で、『レイダース/失われたアークだ』を観終わったときに、男が立ち上がり、「もう一回上映しろ! もう一回上映しろ!」と札束を振りながら叫んでいるのに遭遇する。それがミック・ジャガーだったという話。ほかに、「妻に性欲を感じなくなった」男がかつらを妻にかぶせたら性欲が嵩じて10日ほど持続し、萎えるたびにかつらを新調し、かつらのコレクションが72個に→
2023/05/14
ケンイチミズバ
シーラッハの祖父はオーストリアからのユダヤ人移送の責任者でした。彼は祖父の発言と行動に怒りと恥ずかしさを覚え、そのせいで今の自分になったと言っています。自身のルーツから十字架を背負って生きてきました。ベルリンで落ち合った女性弁護士の祖父母はナチによってウィーンから移送されたユダヤ人で、彼女の母親はウクライナの遠い親戚に預けられ、キーウで大きくなりました。彼女も自身のルーツから、家族の運命が今の自分の原動力と話します。今、彼女はドネツクとルガンスクで起きたロシアによる戦争犯罪の証拠固めに携わっています。
2023/03/02
ケイ
せっかくのシーラッパなのだが、エッセイは読みにくい。ひとつかふたつずつ、つまむように読み、数カ月で読了。何度も読み返したエッセイもある。最も好きなのは「マゼンダ」。保険の商品の名前だが、もとはイタリア北部で多くの兵士が流した血が地面を染めた色だと。彼のエッセイはそこで終わる。好きだが、読みにくさはここかと思う。批判と皮肉をソフィスティケートされた文章にこめている。イギリスのようにニシカルにやり過ごす、ニヤリと笑ってすませられないのだな。イギリスのブラックなユーモアが私にはあっていると改めて思った。
2023/10/17
感想・レビューをもっと見る