時間はだれも待ってくれない
時間はだれも待ってくれない / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
東欧は怪奇・幻想小説のイメージが多かったのですが、SFも中々。国土を大国の都合で引き裂かれ、空爆によって全てを破壊された街を住民が全て、当時のままに再現したポーランドだからこそ、書けた表題作のリリカルさが素晴らしい。「新教皇万歳」は選択に納得しつつもAIが人間の仕事を奪うと警鐘される今だからこそ、少し、心が軋むのかもしれない。「私と犬」の変わりゆく人間だからこその老いの悲しみと変わらないロボットとの対比、「女実業家」のロボットと人間の違いを理解できなくなった世界と人間の身勝手さに震えが止まらない。
2016/08/11
かわうそ
東欧文学の特色か選者の好みもあるのかどこか懐かしい雰囲気の作品が並ぶアンソロジー。前書きから解説まで含め一冊の書物として楽しい。「ブリャハ」「盛雲、庭園に隠れる者」「列車」がベスト3。
2016/03/09
マウリツィウス
【東欧SF変遷/編】ポーランドにて語り継がれたSF選集を高野史緒さんが刷新編成したとも呼べる「傑作選」、「古典主義」を標榜した起源性を正すならば古典ギリシャ語文明の漠大な遺産を東方正教会システムは継承している。この編纂意図を再確認に、スタニスワフ・レム以降の訳語変遷すら予測済みでもある訳文痕跡を求めるならばシェイクスピアの齎した古典主義は否定倒壊される。よって古典ギリシャ語遺産を《正統価値》に設定した功績を再構築出来る。「古典主義」の本来意図を要請する文明性を「SF」ジャンルは内包している。/趣旨把握前提
2014/01/03
三柴ゆよし
未来SFから歴史改変SF、リアリズム小説からバリバリの幻想小説まで、収録作品の範囲はかなり広く、SFファン、幻想小説ファンなら、必ず好みの作品が見つかるはず。個人的には、未来世界の教皇選挙の行方を描いたモンマース「ハーベムス・パーパム(新教皇万歳)」(オーストリア)、迷宮的な幻想のありかたがいかにも古都プラハを思わせるアイヴァス「もうひとつの街(抄)」(チェコ)、ブッツァ―ティの掌篇にも似た味わいのジヴコヴィッチ「列車」(セルビア)。幻想小説ファンとしては、アイヴァスの発見が特に嬉しい。はやく全訳を!
2011/10/08
有沢翔治@文芸同人誌配布中
東欧のSF作家はレムやチャペックしか思い浮かばないが、独特の魅力がある。東欧が共産主義圏だけあって、共産主義を題材にした小説もちらほら。「労働者階級の手にあるインターネット」は滅びたはずの共産主義のドメインからメールが送られてくる話、なんですが、ネットスケープが出てくる! 「女性成功者」と「列車」が一押し。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51492081.html
2017/11/05
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