パリンプセスト (海外文学セレクション)
パリンプセスト (海外文学セレクション) / 感想・レビュー
ヘラジカ
脳内で再現するのが困難なほどに混沌とした幻想世界が展開されるが、そのイマジネーションは時たまどことなく懐かしさを感じさせる。今朝方まで観ていた夢の続きのような、なんとなくこういう風景の中にいたことがあるのではないかという気持ちにさせられるのだ。目眩が起こりそうなほどに奇妙なパリンプセストを、もしかしたら自分も訪れたことがあるのかもしれない(地図を持った人と寝た覚えはないが)。性的でグロテスクな描写が多くても嫌悪感を感じさせないのは優れた幻想文学の証。しかし、読み進むのが恐ろしく疲れる小説だった。
2019/06/28
星落秋風五丈原
日本人が出てきます。そして結構エロいです。
2019/07/20
rinakko
すこぶる好みな作品。夢の中で訪れた街に魅入られた幾人もの男女が入り混じり、再びその道を見出すために体のどこかに地図を持つ相手を探し求める。そして、出会えたならばすぐにも体を重ね合おうとする。…という何とも異様な設定ではあるけれど、“体を重ね合おうとする”理由が彼らなりに狂おしく切実で、現実でのその行為の意味合いからは乖離していく…その感覚も面白かった。あまりにも不可解なパリンプセストの成立ちにぐらぐらと何度も眩暈しつつ、“魂が焦がれてしまう場所”に憑かれ、そのことによって結ぼれていく人たちの物語に耽溺した
2019/07/20
Susumu Kobayashi
現代の幻想小説で、ぼくにははなはだ難解だった。この本の梗概を書けと言われても自信をもっては書けない。パリンプセストとは本来は羊皮紙の写本において、書かれた文字を消して上書きしたもの。本書では夢の中の都市の名前として使用されている。登場人物は世界中に散らばる四人の男女で、なぜか夢の中では互いに意思疎通ができるらしい。夢の記述は別の字体を使用しているようだが、「虫」や「々」、「蜜」は大いに違和感を覚える。京都の伏見稲荷大社で四名が合流して物語は閉じられる。こういう作品を翻訳した訳者に敬意を払いたい。
2019/09/28
ぱせり
幻想的で、グロテスクな言葉や文章が、美しい皿に乗せられて、目の前に差し出されてくるが、それらが本当に意味するものは、なかなかはっきり見せてもらえない。こちらの手のなかでするりと身をかわして逃げていく。まるで鰻みたいだ。悪酔いするような旅だったが、物語が終わるときに見えていたのは、明るさの兆しではないだろうか。
2019/08/05
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