オーブランの少女 (ミステリ・フロンティア)
オーブランの少女 (ミステリ・フロンティア) / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
無垢ならではの残酷・百合の香り漂う「少女」描いた5篇収録。読み進むと、皆川博子さん感じさせる世界。『薔薇密室』『倒立する塔の殺人』ミックスしたような表題作・「片想い」 ミステリーではなく、独特の世界創る新人作家さんとして深緑さんの名は記憶に残りそう。巧くまとまった「大雨とトマト」・表題作。長編として再構築して欲しい「仮面」今にも光にとろけそうな金髪・緩く開いた薄紅色の唇・深い森に咲く、一輪の白百合のような無垢で華奢な少女・リル。鼻は曲り唇は裂け、火傷で爛れた醜い顔の中、唯一美しさ留める眼を持つ姉の→
2015/03/07
kishikan
少女を主人公にした5編の短編集。日本の話もあるけど3編はヨーロッパテイスト。それも中世から近代の話で、魔女狩りじゃないけど貴族階級の愛憎、妬みとか王族の秘密など少し呪われた物語で、クラッシックなミステリ色に包まれている。タイトル作の「オーブランの少女」はその典型。美しい庭園が舞台だけど、その裏に隠された恐ろしい秘密が、美を際立たせる。「氷の皇国」は、いかにもヨーロッパの都市ありそうな悲しい伝説みたいだし、「片思い」などは少女達の友情と隠された秘密が描かれている。残酷な話もあるけど、美しさに溢れたミステリ。
2015/09/20
ひめありす@灯れ松明の火
少女であるという事は、なんと残酷で美しい事だろうか。硝子で出来たランプの様に華奢で脆く、一度失われてしまえば二度と戻らない。風切り羽を奪われた、鳥籠の中の雪衣嬢。鳥籠を飛び出した後の冬の世界では、南の国生まれのお前は生きてゆけないだろう。不自由と自由を番いにする、手首のリボン。雨の夜、静寂は受話器の向こうにだけ。SはSister.Sweet.secret.six&seventeen。醜く、小賢しく、そして逞しく生きていく。例え穴倉の中であっても少女であった時代を生き延びられた者は、何者にも負けない。永遠に
2014/07/21
藤月はな(灯れ松明の火)
無垢な子供でもなく、道理を熟知して行動する女でもない「少女」をテーマにした短編集。表題作での「救い」を題目にした狂気じみた悪意への少女たちが与えた罰は、似たようなことを考えた私にとっては、恐ろしいとは思えなかったです。寧ろ、彼女たちがあのような最期を迎えるまで幸せを感じることができたのかが気になりました。そして「仮面」はアミラのやったことと最後の言葉も突き刺さります。全体的に仄暗い話の中、吉屋信子さんの『花物語』や皆川博子さんの『倒立する塔の殺人』を連想させる「片想い」のラストにホッとします。
2014/02/10
ちはや@灯れ松明の火
忘れないでと彼女は云う。緑なす檻、金の鎖、仮初の花を戴く少女たちが戯れる閉ざされた楽園。誰かを愉しませるだけの美しさなど要らない。霧の街の喧騒に、氷の城の静寂に、片翼だけの小鳥たちは秘めやかに飛び立つ刻を待つ。無邪気という狡猾、純粋という残酷、情熱という冷淡、棘と毒を騙し持つ可憐な花。忘れまいと彼女は誓う。何を擲とうとも、生き抜くために、時に虚偽は真実以上の価値を持つ。互いの弱さを支え合うために、離れないように、逃さぬように、リボンで結った番いの魂。蒼ざめた花が風に揺れる、忘れることなどできはしないと。
2014/01/23
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