アーサー王ここに眠る (創元ブックランド)
アーサー王ここに眠る (創元ブックランド) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
伝説ではないギネヴィアとランスロットの不倫、聖杯を手にするパーシヴァルの生い立ちが描かれフィクションの存在であるグウェンドリンが絡んでいく。場合によって男となったり女となったりする便利なグウェンは奥方の宮廷に入り込むことも戦場に赴く事もできる。本来の意図を越えて運命は動き出す。他の登場人物達の運命と同じように。伝説なんてどこ吹く風だったアーサーが最後に伝説を生かすために為した事や、“鷺のような人”とグウェンに称されていた典雅な奥方に秘められていた情熱などアーサー王伝説でお馴染みの人々が皆人間臭くて面白い。
2019/11/12
たま
読友さんに教えられた本。子どもの頃アーサー王伝説はあまり好きじゃなかった。多分、金髪美人礼賛に胡散臭い超自然のせいだったと思う。この本ではミルディン(魔法使いマーリン)の物語論が胡散臭い超自然をやすやすと吹っ飛ばし、従者の少女が少年になったり少女になったり(あくまでも普通の少女で月経もあり、超人的な力を発揮したりはしない)することで、騎士物語の強固なジェンダー観を軽々と乗り越える。彼女と一緒にリアルな冒険をしながら、積年の疑念が氷解し、快哉を叫んだ。カーネギー賞受賞も納得の快著。
2022/04/02
すけきよ
物語の力を描いたファンタジーであり、ファンタジーが紡ぎ出されていく様子を描いた物語。山賊に毛が生えた程度のアーサーに対して、人々は好感を持っていない。しかし、ひとたび、吟遊詩人が着色するや、全てが幻想に彩られた冒険譚として上書きされていく。この読者の印象さえも操る物語化が見事で、多少なりともアーサー王伝説を知っているのなら、後にエピソードとして織り込まれていく出来事を目撃し、心揺さぶられる。物語の力を利用しながら、物語自体は信じていないミルディン。そんな彼が、物語の力と真実の間で最後に語る物語が感動的。
2009/11/18
なつきネコ@中の人だよ!
史実のアルトリウスをアーサー王伝説へとつなげていく話。ある程度アーサー王伝説の内容を知っていると楽しい。登場する彼らが伝説の誰か。物語の役割と分解し分配しているのが上手いな。少女のグウィーナだけが真実を知りながら物語の効力はスゴい。事実は鮮やかでも何でもないはずなのに、ミルティが語りだすと鮮やかな話へと変わる。アーサーがカリバーンを手に入れる経緯は有名な場面だからこそ、歴史の真実を見てるようで良い。グウィーナとペレドゥルの女性と男性の間を行き来する設定も見事。何も知らないペレドゥルは男の娘の可能性をみた。
2019/02/05
TERu☆
偉大なアーサー王の伝説・・・ではなく、ちょっと残念な盗賊まがいの騎士団の族長アーサーの話し。 アーサーをブリテンの王へとでっちあげようと吟遊詩人のミルディンは各地をまわり、多少の嘘や話しを誇張して、偉大な領主へとしたてていく。 ドラゴンや魔法、伝説もこうして人が作りあげていったのかな・・・!? っと妙に納得してしまう一冊。
2013/04/04
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