エフィラは泳ぎ出せない (ミステリ・フロンティア 114)
エフィラは泳ぎ出せない (ミステリ・フロンティア 114) / 感想・レビュー
ナミのママ
すごく良かった。障害者が登場する作品の感想を書こうとすると戸惑うのは、私の中に障害者は違う人という思いがあるからだろう。兄の訃報を聞き7年ぶりに故郷に帰った衛。音信不通だったのには理由があった。そして知的障害者の兄は本当に自殺だったのか?真相を調べ始める。「妻を亡くし男手で息子たちを育てた父」「母親がわりとなり育てた母の姉」「兄弟と遊んで育った幼馴染の女性」それぞれの視点から「障害者」である聡が語られる。死の真相が哀しい。好き嫌い・賛否が分かれると思うけれど、そっとお薦めしたい作品。
2022/10/23
よっち
東京でフリーライターとして暮らす小野寺衛が、同棲する玲奈の妊娠が判明した夏の日、故郷の松島町に残してきた知的障害がある兄の死の知らせを受ける慟哭のミステリ。七年間帰っていなかった実家への複雑な思いを抱いての帰省。なぜ障害者枠で大企業に務めていたはずの兄が自殺したのか、その死の真相にアプローチしてゆく衛。調べる明らかになってゆく父親の悔恨、伯母の依存心、幼馴染の欺瞞、周囲に理解してもらえない兄の苦悩があって、けれど何よりも兄が本当の意味で切望していたものを知ってしまう結末には、胸を締め付けられる思いでした。
2022/10/04
rosetta
★★★★☆ノンフィクション作家のミステリデビュー作。エフィラとは自分ではまだ泳げない波に流されるだけの海月の幼生のこと。東京でフリーライタの衛は松島に残した兄の聡の自死の知らせを受ける。天使のように愛らしいと言われた聡は知的障害があり絵の才能があった。兄の死に不審を覚えた衛は真相を知りたいと思う。父の健蔵、早くに死んだ母の姉で子供たちを育ててくれた妙子、シングルマザの子で兄弟と仲の良かった百合。主人公が変わる度に様相は次々に新たな面を見せる、まるで『藪の中』。最後に見つけた本当は?慟哭の一冊。
2022/09/22
スミレ
知的障害者である兄・聡が死んでしまった。 自殺として処理されてしまった兄の死に疑問を持った衛は真相を調べ始める。 弟、父親、伯母、友人の視点で描かれていて、それぞれが抱える苦悩、悔恨、葛藤などに心打たれました。 真相も衝撃的で、ミステリーとしても読み応えがありました。 心に響くものが大きすぎて読後の感想が上手く表現できませんが、読んで良かったと心から思います。
2022/10/11
ふう
フリーライターである著者のミステリー初挑戦という本作。読みやすくはあるけどミステリーとしては淡々としすぎてて、最後ちょっと泣かせる割にはあっさり薄味だったような。主人公も著者と同じくフリーライター。知的障害のある兄が自殺したという報せを受け、久しぶりに訪れた故郷で兄の死の真相を明らかにしていくうちに知る親しい人たちの様々な一面を知る。あなたのため=自分のためがベストに思えるけど、自分勝手な”あなたのため”は最悪だしなあ。「生きていく」のは簡単で難しい。ほんとそう思う。
2022/10/25
感想・レビューをもっと見る