赤朽葉家の伝説
赤朽葉家の伝説 / 感想・レビュー
hiro
児玉清の「あの作家に会いたい」でこの本に出会う。鳥取で製鉄所を営む旧家の女三代、ひろわれっ子の万葉、元レディースから人気少女漫画家となった毛毬、語り手でなにひとつない瞳子の約50年を描いた大河小説。この長編には、毛毬を含め、波乱万丈の人生を送った女性がたくさん出てくるが、やはりこの物語の中心は、辺境の人に捨てられ、読み書きもできない万葉が、望まれて赤朽葉家に嫁ぎ、千里眼奥様として旧家を守っていく姿だ。でも万葉ように自分の子供が見える千里眼はつらいだろうなぁ。気になる毛毬の物語は製鉄天使で読むことにする。
2011/10/08
遥かなる想い
2007年このミス国内第二位。 女系3代にまたがる壮大な話。赤朽葉家の醸し出す雰囲気はどこか八墓村に似ていると感じたのは私だけだろうか。万葉、毛毬と登場する女性も魅力的である。
2010/07/24
ミナコ@灯れ松明の火
繋がっていく血と、時代と、赤い家に翻弄される女たち。それぞれに背負い、苦しみ、悟り、生きづらさを感じながらも前を向こうとする姿にぐっと胸が詰まった。「家」という小さな世界を描きながらも時代背景にまで思いを馳せさせる壮大さが素晴らしい。赤い家と製鉄所の黒い煙と、色合いがリアルに脳裏に映し出されていい意味で酔った。ラスト、全てが終焉するのではなくビューティフルワールドへ向かい、まるで何かを掴むために未来へぐっと手を広げるような気分で本を閉じられるのも良かったと思う。
2012/01/10
エンブレムT
腐りかけた紅葉の『赤』を思い起こさせる旧家の物語・・・ドロドロ展開かと思いきや意外にも軽やかな面白さでした。千里眼奥様・万葉。手負いの美獣のような・毛毬。悩みながら現代を生きる・瞳子。女達三代に渡る赤朽葉家の物語。それぞれが生きる『時代の持つパワー』が反映されてるような彼女達の個性。実際の日本経済史を織り交ぜた、虚実入り乱れた絶妙なファンタジーとして楽しんでたのですが、なんとミステリー仕立てでした!万葉の淡い恋心と、不思議な友情が良かった。
2010/06/30
風眠
1953年(昭和28年)から現代にかけて、旧家である赤朽葉家・三代にわたる年代記。一代目万葉・電波系、二代目毛毬・ヤンキー、三代目瞳子・ニート、それぞれ個性が強く、ある意味で運命に逆らわず、ある意味で正直に、自分のために生きた女たちだと思う。すでに物語になってしまった時代と、人と、世界と、そしてまだ物語にはなり得ない、今へと。物語が進むにつれて、エピソードが薄まっていくように感じるのは、そういう作家の意図なのかとも思う。古めかしく堅苦しい文章の中にも、人を食ったような表現をさらりと含む感じは嫌いじゃない。
2012/11/17
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