双頭のバビロン
双頭のバビロン / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
1892年ウィーン。現在で言う帝王切開で生を受けたゲオルグとユリアン。肉体の一部が癒着したまま生まれたシャム双生児。オーストリア貴族の血を引く為、4歳まで人目につかぬ独房のような部屋で暮らす二人。手術により肉体の癒着は分離され、二つの魂と体は別々の物語を紡いでいく。ゲオルグは貴族の跡取りとして‐やがて聖林(ハリウッド)の映画監督としての道を。ユリアンは貴族の家から存在を抹消され、芸術家の家(精神病施設)でツヴェンゲルという無二の親友を得る。双子であるが故の精神感応。相手のした経験を感応し→続く
2012/06/02
財布にジャック
皆川さん、どうもありがとうございます。「死の泉」や「薔薇密室」で皆川さんに嵌って以来いくつかの作品を読みましたが、ここまで好みだと思ったのは久々です。オーストリア、アメリカ、中国とスケールも大きく、壮大なドラマが繰広げられます。離れ離れの双子の運命を追いかけていくうちに、皆川さんの仕掛けた罠に否応なしに嵌って行くのです。あなたはゲオルクなの?それともユリアンなの?と、何度も頭の中で問いかけながら、この幻想的な謎めいた世界に取り込まれてしまい、現実世界に帰ることを忘れる程没頭しました。堪能しました!
2012/08/13
ちょろこ
余韻からまだ覚めやらぬ一冊。重厚さと装丁に惹かれて手にした世界。一ページ目から抜け出せない予感が的中。ゲオルク、ユリアン、ツヴェンケル、皆川さんの紡ぐ三人の時間に、心に、たゆたいながら酔わされ、ひたすら絡めとられた。自分がどこに連れていかれるのか果てしない酔いの旅。そしてとてつもない余韻と共に終わりを告げた酔いの旅だった。非在の存在ユリアンとツヴェンケルの二人の世界は美しい。そして心に浮かぶのは美しさを感じる傷跡。彼の傷跡に触れたい、覚めやらぬ余韻と共にそう感じたのは自分だけだろうか。
2019/03/09
東雲
齢八十を過ぎてなお挑発的な作品を描き続ける皆川博子の『双頭のバビロン』。19世紀末のオーストリア・ウィーン。結合双生児として産まれたゲオルクとユリアンの荘厳華麗な運命譚。腐爛直前のウィーン、トーキー前夜のハリウッド、悪徳の上海、舞台をさまざまに移しながら近づいては離れる双子。そのかたわらにつねに寄り添う謎の少年ツヴェンゲル。三人の運命は鴉片と臓物の悪臭にまみれた街でついに交わる。複雑に編み込まれた伏線、精緻な構成、ただよう頽廃の空気に知らずため息がもれ、読後はしばし放心。
2013/02/16
夜梨@灯れ松明の火
図書館。読み始めてすぐに、私の(好きな)好みでなかったかも…と不安になりました、しばらく読むうちに惹きこまれ、そこからは頁を繰るのがもどかしい位でした。双生児のゲオルクとユリアンが、互いの存在を知らずに生き、そしていつしか2人の運命が交錯し…。人間の汚い部分が浮き彫りになる話なのに、こんなに読後感が美しく清々しいなんて。最近よくある「子供がかかわる犯罪小説」の作者(誰という事ではないです)に読ませたい位です。 80歳(でしたっけ?)にしてこの力作。素晴らしい。これは、是非購入し、再読せねば。
2013/03/28
感想・レビューをもっと見る