夜の国のクーパー
夜の国のクーパー / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2012年に刊行された書き下ろし長編で、寓話小説のスタイルをとる。作中では猫や鼠も人語を話し解するが、小説全体のトーンは重苦しい。とりわけ前半部においてそうだ。侵略者たる鉄国が突然にやって来るのだが、安部公房ばりの不条理な世界がそこに現出するわけではない。そして、タイトルにある「クーパー」がキー・コードとなって物語は進行してゆくのだが、後半はやや構想の緊密性が維持できなくなるようだ。それは、しだいに謎が謎でなくなるにつれて、途中からは結末が予想されるからでもある。最終部の着地も今一つキマラなかったか。
2022/11/19
kishikan
あとがきで伊坂さんは、作中人物の名前については大江作品の影響があったと言うけれど、この小説全体に漂う雰囲気は宮沢賢治だったなぁ。この小説は純な世界に住む「猫」と現代人の「僕」という二つの視点で描かれた物語。伊坂さんらしいのはスゥィフトのガリバー物語を彷彿させながら、現代の政治や社会経済の矛盾を痛烈に指摘するところ。ファンタジー的なストーリは、伊坂さんの新境地という感じがする。その点これまでの作風と異なりとっつきにくいと思う人もいるだろうけど、僕は一段の高みに達したと評価したい。更なる活躍を期待したい。
2012/07/30
扉のこちら側
初読。現代物だと思って読み始めたら、予想外にファンタジーで戸惑ったが、すんなり入り込めた。猫が語り手というのと、何も知らない日本人の彼へ国や戦争のことを教えていくという設定があったからだと思う。統治者のやり方とか、生け贄となりクーパーの兵士とか、人間の裏の面が書かれていたけれど、最後は綺麗にまとまっていた。
2013/03/30
yu
一言で言うなら、大人の童話。オーデュボンの祈りの優午のような、不思議な世界観を味わえる。仙台から船で出発したら、こんな世界にたどり着けるのかなぁと思わずにいられない。 優午に会えるのか、トム君に会えるのかはその人次第?最後はやっぱり「帰る」んだろうけど、一度はこんな世界に紛れこむのもいいな。 そして、猫の世界の描き方がすごくいい。猫のつれなさがよくわかる。 猫を飼ったら名前はトムとギャロにしよう(2匹飼うのが前提?)。「会いたかったよ、トム」って言おう。
2012/06/04
ダイ@2019.11.2~一時休止
猫と話のできる男と猫が主人公のSF小説?。一気に回収されていく終盤は流石で、ハッピーエンドっぽい終わり方も良かった。
2014/06/07
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