ジェリーフィッシュは凍らない
ジェリーフィッシュは凍らない / 感想・レビュー
W-G
主役刑事二人のキャラが凄くいい。全体的に平均点以上な気はする。しかし、新機軸は"ジェリーフィッシュ"という架空の乗り物を創出した事に完全に依っており、ミステリとしての骨格は既視感が強く、続編が出ている今だからなおさら感じる不安要素も沢山ある。作を重ねる毎に架空の何かを創り出さないと、ただジェリーフィッシュという乗り物が存在するだけの世界になってしまい、せっかくのパラレルワールドが陳腐になってしまうのと、本格ミステリと刑事小説の中間をついたような内容で、どちらにも舵を切れてしまうのが不安といえば不安。
2017/10/01
青乃108号
ジェリーフィッシュと呼ばれる小型飛行船を巡る陰謀と船内で起きる殺人の物語。ストーリーは3つの異なる時系列の物語を同時進行で走らせ、最後に1つにまとめてみせる形式である。2つならまだしも3つの時系列同時進行はポンコツ頭には負担が大きく、途中で何度も迷子に。しかしエピローグの解決編で丁寧に説明してくれる親切設計で俺にも理解が出来た。二度読みを強いるミステリーが最近多い中で、一度読めば十分に満足出来るこの様な作品は好ましい。ラストは賛否あるかも知れないが俺的には好み。総合的にも良作だと思う。次作も読んでみよう。
2023/06/19
nobby
なるほど確かに新しい『そして誰もいなくなった』!最新鋭の小型飛行船という設定があまりピンとこなかったが、表紙左上の絵から〈ジェリーフィッシュ〉命名はセンスあり。過去エピソード・航行の様子・捜査模様が順番に描かれて分かりやすい。探偵役二人による導きがちょっと微妙で、最後一気の説明はどうなのかな…それでも複雑な真相明かされてみると、その合わさり方がなかなか秀逸。真犯人と対峙した際のセリフが衝撃(笑)予想の範疇な人物だろうけど、そのトリックにちょっと違和感あるかなぁ…
2017/01/17
しんたろー
読友さんオススメ、市川憂人さんの鮎川賞受賞作を初読み。謳い文句「21世紀の『そして誰もいなくなった』」のせいで、早い段階で犯人の目星がついてしまうのが残念。状況が出揃うまでトリックは見抜けないが、犯人当てはミステリの大切な要素なので、売り方に気を付けて欲しい。これは著者の責任ではないし、80年代を舞台にした設定、人物の置き方、時系列差をつけた構成など、アチコチに非凡さを感じさせてくれて次作も期待できる。(人に情が加われば凄い作家になるかも)会話の面白いマリア&漣が活躍しているらしい第2作も楽しみたい♪
2017/12/19
🐾Yoko Omoto🐾
80年代の架空国を舞台に、ジェリーフィッシュと呼ばれる小型飛行船の開発を巡って巻き起こる、閉鎖状況での連続殺人。犯人の人物像や動機をインタールードで徐々に明かしながら、事件が進行する船内と、全容解明に挑む刑事の動向が並行して進む展開は、"そして誰も~"というより"十角館"を彷彿とさせ、王道の構成に心が踊る。ストレートな真相も、設定の新鮮さや物語の運びの巧さで補い読ませる秀作。特にマリア刑事の、インパクト大の一言は特筆ものだ。装丁の美しさに目を惹かれながら、正統派本格ミステリの醍醐味を心行くまで堪能した。
2016/12/18
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