戦場のコックたち
戦場のコックたち / 感想・レビュー
ヴェネツィア
既視感を覚えながら読んでいたのだが、これはまさにノルマンディー上陸作戦を描いた"Band of Brothers"ではないか。巻末の参考文献にアンブローズの原作と映像作品とが掲げられているが、おそらく本書はこれに大いに触発されて書き始められたのだと思われる。小説は一貫してティモシー(=キッド)の一人称語りでなされるが、戦場での臨場感を考えれば最も妥当な方法だった。ただいくつかの事件の謎解きは不要ではないかとも思うが、プロットの進行上、作家にとって必要とされたのだろう。戦場文学としてはレマルクの⇒
2022/06/20
starbro
このミスにランキングされた時に予約して、ようやく読めました。深緑野分、初読です。まず驚いたのが、日本人作家が本作を書いた事です。時代設定(第二次世界大戦)、物語の舞台(欧州)、登場人物に日本人が全く登場しない、二段組みの小説、外国人作家の作と言われても信じられます。コック兵が見たヨーロッパ戦線、青春戦争文学として良質な作品ですが、何故ミステリにカテゴライズされているかは疑問です。ミステリアスな要素はあるものの、この作品がミステリだとすると、国内のミステリ作家はもっと頑張らないといけないと思います。
2016/03/18
遥かなる想い
2016年度このミス国内第2位。 舞台は1944年のヨーロッパのノルマンディー 大作戦。ミステリというよりも コック兵ティムの視点の戦争文学というのが ふさわしい気がする。 ナチス統治下のフランスで起こった 事件を軸に戦時下の風景を描く。 600個の粉末卵の箱が紛失..だがこの事件で 著者は何を描こうとしたのか..コックたちの 視点で戦争の無惨さを描いてはいるが.. 日本人が描く第二次世界大戦下のヨーロッパ、 ..正直入り込みにくい展開だった。
2016/03/12
ウッディ
惣菜作り名人の祖母の影響でコック兵となったキッドことティムは、第二次世界大戦のドイツ戦線で、戦いと調理と小さな謎解きに明け暮れる。コック兵、それも米軍のコックの仕事や戦いの様子がわかり面白かった。予備パラシュートを集める男、粉末卵の大量紛失、極寒の戦地に現れる幽霊などの謎解きも‥。優しいティムと頭脳明晰なエド、彼らだから、戦地でも自分らしさを失わなかったのかも‥と思えました。けど、一番の謎は、この本が翻訳ではなく、日本の作家が描いた小説だったこと。何故、この題材を選んだんだろう?
2018/02/18
yoshida
第二次世界大戦の、ノルマンディーからの欧州戦線を中心に、ベルリンの壁崩壊までを描く。アメリカ人のティムは軍に志願。料理に馴染みがあり、コック兵と言われる特技兵となる。ティムの視線を通じて煉獄の戦場の日々が描かれる。初年兵から古参兵に成長するにつれ荒れるティムの心。悲惨な戦線の中で生まれる戦友達との絆。そして少しの運命の綾で喪われる命。この作品は戦争に真の意味で勝者などいない事を厳かに訴える。なぜ世界で戦火や差別が消えないのか。私達は歴史に学び、自分達の事として世界から戦火をなくす努力をしなければならない。
2017/02/11
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