王とサーカス
王とサーカス / 感想・レビュー
starbro
先日の「満願」に続いて米澤穂信の新作を読みました。400P超一気読みで、十分面白かったのですが、「王とサーカス」というタイトルから、王族の殺人事件に絡んだ壮大な国際ミステリかと思いきや、かなりこじんまりとしたミステリでした。主題は国際報道の在り方を問う事だったのかも知れません。著者の最高傑作という触れ込みですが、「満願」の方が評価は高いと思います。因みに「王とサーカス」のサーカスはネパールならではの象のサーカスではなく、ローマ時代の「パンとサーカス」のサーカス(見世物・娯楽)とほぼ同義です。
2015/09/07
サム・ミイラ
その昔某スポーツ新聞でフリーの記者をしていた。取材し記事を書いた。なのでどうしてもこの主人公に感情移入してしまう。たまたまネパールに滞在中王室で殺人事件が発生、国家は存亡の危機に。さらに情報を得るため接触した軍人は謎の死を遂げる。果して真相は?実際の事件を基にドキュメンタリーの如く展開する物語は実にスリリング。何のため書くのかそしてその意義は。悩みながら命の危機に晒されながらも真実を追う姿に静かな興奮が沸き上がる満願を越えるクールな傑作。このメッセージはどこまでも鋭く深く哀しい。米澤穂信は本当に成長した。
2016/09/23
遥かなる想い
2016年このミス国内第1位。カトマンズを 舞台にした本書は異国情緒満載で大刀洗万智と ともに旅をしている気になる。2001年発生した ネパール王族殺害事件をモチーフにした著者の ミステリーの世界は妙に落ち着いており、 物静かである。淡々とした語りの裏に 隠されている真実は何なのか..正直ミステリー として読むと物足りないが 不穏当な世界を 知るには手頃な、そんなお話だった。
2016/03/21
紅はこべ
硬質なヒロインだ。善かれと思ってしたことが、憎しみを買う衝撃。人間の二面性。ニュースは娯楽。それでも見続けて、書くのが務め。子供が年齢より大人にならなければならない社会は辛いね。欧米の先進国の価値観で、東洋の貧しい国の実情を断罪する罪。犯人よりも被害者が謎。相反する役目を両立し続けた苦悩をどうやって克服していたのか。アメリカ人の大学生旅行者、いかにもだなあ。
2016/10/10
yoshida
米澤穂信さんは初読みの作家さんです。じっくり読ませてくれます。雑誌の取材でネパールを訪れていた万智。突如、王族殺害事件に遭遇。事件を調べる中、接触した軍人が殺害される。万智は限られた時間で、事件を調べる。問われる万智のジャーナリストとしての信念。ジャーナリストが告発した後の影響はどうなるのか。振りかざした正義が、結果として新たな問題を残してしまうこともある。サガルと万智のやりとりに考えさせられた。ジャーナリストの影響力と功罪に気付く。ネパールの空気感が伝わる文体。読み応えがあり、考えさせられる作品でした。
2017/06/25
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