たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)
たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説) / 感想・レビュー
starbro
2020年国内ミステリ三冠(『このミステリーがすごい!2021年版』、週刊文春2020ミステリーベスト10、ハヤカワ・ミステリマガジン ミステリが読みたい!)ということで読みました。辻 真先、初読です。米寿の著者の割には若々しい戦後青春ミステリの佳作、面白いですが、本作が2020年ミステリの代表作、ダントツ1位となると甚だ疑問です??? 戦争犯罪、大量殺戮に対し、『たかが殺人じゃないか』という言葉は重いですが・・・ http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028107
2021/01/07
へくとぱすかる
うわぁ、何てミステリなんだろう! よくわかる場所に大事なものがあるのに、結局気がつかない、ミスディレクションの最極致。しかも読者への質問状という、実質的な挑戦状まで挿入するという趣向。そして最後の最後まで読んで、驚いたの何のって! 1949年という時代の世相を、主人公と同世代の著者だからこそ描けた貴重な物語だと感心したのもつかの間、凝りに凝った本格ミステリとしての仕掛けへの驚きが、感心すら覆してしまった。でも最大の驚きは、88歳の辻真先氏によってこれが書かれたこと。「仮題・中学殺人事件」も読まなきゃ!
2021/01/31
パトラッシュ
占領軍の命令で従来のやり方が否定された昭和24年は、ドッジラインや新中国成立など大事件もあり何が起こってもおかしくない空気がたちこめていただろう。そんな矛盾や苛立ちが集約された新制高校を舞台に、男女共学やキティ台風、闇市にパンパンなどの出来事を背景とした殺人事件は巧みな着眼点だ。著者が「かなり実話が入っている」という学園ドラマも面白く、一粒で何度もおいしいミステリに仕上がっている。何より戦争という巨大な殺し合いに比べれば、1人2人殺すことなど「たかが殺人」でしかない事実はミステリ読者として考えさせられる。
2021/01/17
旅するランナー
昭和24年、戦後間もない名古屋の高校3年生たちが、密室殺人とバラバラ殺人に巻き込まれる。価値観がガラリと変わりつつも、戦争の傷痕がジワリと残る時代の空気が見事に描き込まれています。推理小説としてだけでなく、時代小説としても素晴らしい。たくさん出てくる当時の映画を知っていたら、より楽しめそう。もし映像化されることがあれば、別宮操先生は元タカラジェンヌが演じるんだろうな。
2020/12/28
stobe1904
【ミステリランキング3冠】2021年の国内ミステリを席巻した作品。昭和24年の戦火から復興しつつある名古屋の新制高校が舞台。高校3年生に編入された勝利と推理小説研究会のメンバーが合宿先を訪れるとそこで起きた殺人事件に巻き込まれ…。戦後のこの時期ならではの時代性と青春の甘酸っぱさが本格ミステリをうまく支えている。読者への挑戦もあるが、まったくかすりもしなかったが、評判通りの素晴らしいミステリ作品だった。★★★★★
2023/04/24
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