暗闇にレンズ
暗闇にレンズ / 感想・レビュー
buchipanda3
光と影でしかない映像、それは幻想であるが現実のようでもある。それに準えるように、全て創作なのにあたかもノンフィクションのような細緻な偽史とフィクションのドラマが交差する特異な物語を堪能した。そして映像技術の進歩と共に変化を見せる人間社会を描く叙事詩を読み切った愉悦感も残る。波瀾な人生までも代々受け継いだ女性たちが映したもの、それは世の中という物語との戯れと祈りだったのかもしれない。彼女らの奔放に世界を写し撮る感性の瑞々しさは、映像が発する魔法のような驚きと楽しさの原点を思い出させた。それは幻ではないはず。
2020/10/09
アキ
芥川賞作家の最新刊。親子3代にわたる映像の物語。SideAでは現代の高校生2人にまつわる映像に関する物語を、SideBでは1898年初めて日本に幻灯機が入ってから未来に至る道筋を3部に分けて、フランスに渡った照と、1924年ドイツ記録映像にかかわる未知江と、1945年からひかりの物語で描き、最後にAB両サイドが交わるところで終える。そこまで映像技術が、軍事利用されていたとは知りませんでした。最新技術は軍事技術の転用が多いですね。現代は至る所にレンズがある社会。およそ120年の変遷する世界を旅してきた気分。
2020/11/07
Vakira
五感の中で一番早く感じる事が出来る感性。それは光の速さで感受する視感だ。約4km先(地平線まで)の情報を瞬時に知れる。視感でこの世界を知ることが出来る者が生き残れる。人類はそれで繁栄してきた。そして去り行く時間を切取り残す技を発見した。現実の瞬間を2次元として。紙としては写真だし、スクリーンやディスプレイでは映像となる。その1コマ1コマを連続させれば動画だ。ドキュメンタリーであれ、それに演出を入れた映画であれ、多くの人はその映像に心奪われ酔いしれる。今ではスマホとしてなくてはならない生活の一部に。
2020/11/12
pohcho
監視カメラだらけの街に生きる女子高生二人。明治時代、横浜で娼館を営む家に生まれた少女・照から始まる、代々映像に関わってきた女性たち。二つの物語が交互に語られ後につながる。必ずしも血のつながりはないけれど、家族として続いていく女性たち。彼女たちにとっての映像は生きる糧であり、やがて武器になり、そのために命を落とす人も。その数奇な運命と不思議な物語に引き込まれた。映像兵器の話は不穏。偽史とのことだが、本当だったらと思うと恐ろしい。最後はよくわからなかった。つかめそうでつかめない、もどかしい気持ちが残る。
2020/11/05
八百
ありえない!とは一概には言い切れない…くらいの優しいツッコミが出来るのが娯楽の王道でありその余地すら残ってないのであればそのSFはサイエンスフィクションではなく壮大なフェイク。例えば小学生がいたずらで拡散した動画に何かが含まれておりそれが原因で地球は滅びる…そんなことができる端末を誰もが所有する時代の危うさを描くのならばその映像兵器の部分をもっとリアルにしないとダメなんじゃない?あれこれ詰め込み過ぎてまとまりがなく無駄に長くなった、そしてなりより首里の馬のようなしてやられた感がなかったことがなんとも残念
2021/02/11
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