金環日蝕
金環日蝕 / 感想・レビュー
さてさて
一見、”学園モノ?”を思わせるようなどこか軽いタッチで始まる物語が、突然、社会問題化もされている超重量級の『犯罪』に光を当てていくこの作品。そこには、全く立場の異なる二人の女性視点による”壮大なミステリ”が描かれていました。まるで”純文学”を思わせるような書名と表紙に抱くイメージからどこか大きくズレた登場人物たちが繰り広げる極めてアンバランスなこの作品。そんな物語のその先に、強烈な光と対になるように漆黒の闇が顔を出す絶妙な構成のこの作品。書名と表紙の強いインパクトがいつまでも尾を引く素晴らしい作品でした。
2023/05/06
bunmei
ミステリーとして次への展開に興味を抱かせ、とても練り込まれた作風。詐欺をモチーフにした闇の世界の中に、一筋の優しさや大切なものを差し込み、読後に余韻を残すミステリーに仕上がっている。周囲は輝いて見えるのに、その中心は闇に閉ざされた、人の相反する心理を『金環日蝕』と表題しているのだろう。路上で近隣の老女のひったくり事件を目撃した春風と錬。貧困により、カガヤという謎の男にいつの間にか詐欺の片棒を担がされていく女性。その2つの事案が次第に交錯し、それまでの全ての事案が、必然となって結びつき、謎が明かされていく。
2022/12/24
いつでも母さん
いやいや、ひったくり犯を追いかけるって、実際にも時々ニュースになったりするけれど危ないよ・・(って、そこじゃない)そんな物語の始まりだった。正直言ってちょっと長く感じた。これは詐欺指南小説?とも思えたが、そう簡単には上手く行かないと思うものの、人がいる限り騙し騙されるって無くならないのだろうな。手を変え品を変え新たな詐欺が湧いてくる社会に生きてる私たち。終章で「消えてほしくない人と、ちゃんと目を合わせていられる自分でいろ。」というところがあったがそこだと思う。ただ、私にはちょっと今一つな感じだった。
2024/01/27
hiace9000
『金環日蝕』…眩い太陽光を月の陰が遮る刹那。天と地ほどの振り幅で各章を明暗のコントラストで描き、やがて交錯する2つの事件が見せた闇に沈んでいた真相とは…。人間の顔はひとつではない。今、自分が見ているその顔が真実か否かは、実はわからない。人間に内在するであろう、騙す欺くという本源的な性や欲求。日常に潜む不穏さを日蝕の闇の中から炙りだし、二重三重の構えで人間ドラマミステリーに紡ぎ上げる。時あたかも特殊詐欺・連続強盗事件容疑者逮捕の報が巷を席巻。タイムリーさとも相まって、シーズンベスト・ミステリー作品になった。
2023/02/11
reo
発端は七十歳の女性が引ったくりに遭うところから。その引ったくり犯を追っかけ、もう一歩のところで取り逃がす春風と錬。二人は行きがかり上、二日間を目途に犯人捜しを始める。そしてこの事件の裏には、特殊詐欺や倒産詐欺など、彼らに取って重い真相が明らかになってゆく。物語はカガヤを軸にし春風、錬、理緒の三視点から語られ、四百ページを一気に読ませる。阿部暁子氏初読み。なかなかに面白い😀
2023/02/28
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