秘密諜報部員 (創元推理文庫 M モ 2-1)
秘密諜報部員 (創元推理文庫 M モ 2-1) / 感想・レビュー
absinthe
『月と6ペンス』の文豪が書いた冒険小説と思って読んでみたが、むしろ純文学だった。ヒーローのいないスパイ小説。モームの主眼は人間の愚かさにあるのか、国際情勢よりも人間の描写に重きが置かれる。知的な男が美女で身を持ち崩したり、人と言うのはどうしてこう面倒に作られているのか問われている気がする。主人公が標的を国境のこちらにおびき出すため、恋人に投獄すると圧力をかけて嘘の手紙を書かせる場面。ヒーローものなら悪役の方が似合うやつだ。冷徹な視点に基づいた人間観察小説。
2022/02/28
kinka
ル=カレ、G・グリーン、最近だとフォーサイス、そして勿論イアン・フレミング。英国にはスパイ活動に携わったと公言している作家が結構いる。文豪サマセット・モームもその一人。これは自身の体験を元にしたスパイ小説。作家にスパイ活動をさせる理由はいろいろあって、旅をしていても不自然じゃないとかインテリだからとか、多言語話者が多いとか、使えるもんは使ってやれっていうアングロサクソン魂とかまあ色々だけど、やはり人間を見る仕事、しかも冷徹に、かつ客観視できるからなんだろう、と読みながら思った。落ちはないけど心に来る本だ。
2016/05/03
頭痛い子
めっちゃくっちゃ面白かった。一気読みに近いのだけど、文字が小さくページにギュッと押し込まれているので、そんなに1日にページを稼げない。『売国奴』だけは、世界スパイ傑作選で読んでいたけれど、ほかの短編(全編通して読めば長編なのかな?)も読者を飽きさせることなく秀逸です。最後に添えられたモームあとがきも良いし、たまに挟み込まれる作家たるもの、みたいな小言もいい。たまに読み返したいですね、プロットさることながら、キャラクターが濃い。とくだん事件らしい事件起きないのに、ページをめくれずにおられない。
2024/06/08
ネムル
スパイ小説のつもりで読んだが緊張感もあまりなく、コレジャナイ感が……。ある種の警察小説が倦怠であることを美とするように、これまた悪い意味でなく倦怠である。ひとりのスパイが諜報活動の中で出会った人たちとの交流や昔話などをまとめた連作集。そこで描かれるモラルや生き方などは決して説教臭くはならず、なかなか面白い。モームの他の作品を読んでから帰ってくると、色々発見がありそうな気もする。
2015/05/01
ext3
え?これで終わり?って話がチラホラ。リアルなのかもしれないが面白くはない。やっぱり「文学」だからか、そんなに相手が可哀想なら辞めちまえよって思ってしまった。別に徴兵された訳じゃなくて、自分から志願したんだろうに。あと、英国流ユーモアってのは相変わらず理解不能。良くわからないところにこだわってる気がする。
2010/02/22
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