かわいい女 (創元推理文庫 131-2)
かわいい女 (創元推理文庫 131-2) / 感想・レビュー
夜間飛行
マーロウという探偵はハッタリや意表外の言動が多く、それが駆け引きの時もあれば、感情に駆られたり何の意味もない時もある。女に心を移さず、行く先々で人が殺されても動じないクールさを表に出しているが、読むうちに時々見せる熱い心や疎外感・虚しさなど、複雑な感情にハッとさせられる。本作は、失踪した兄を探してほしいという娘の願いを受け、麻薬組織とハリウッド映画界の闇に迫っていく話である。この男は誰の助けも借りずいつも一人で行動するから、急に危ない場面やラブシーンになることも多く、ハラハラしながら話にのめり込んでいた。
2022/02/20
まつうら
ハリウッド女優のメイヴィスにひと目惚れしてしまったマーロウ。困っているようなので力になりますと申し出るが、あっさり振られてしまい、センチメンタルなマーロウ。しかし気を取り直すと、彼女のマネージャから仕事をゲット! 500ドルという報酬は、マーロウ史上最高額ではなかろうか? それで勇んで動き始めると、どうやら姉妹間での脅迫に利用されているだけなことがわかってくる。。。マーロウ君、ちょっとカッコ悪いぜ? 報酬の500ドル分、メイヴィスを守ることはできたのかい? いつもの君はもっとスマートだよね、マーロウ君!
2023/06/29
くたくた
『タフでなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない。』ハードボイルド読書会、チャンドラー4冊目。読むのが長引いたせいか、自分が疲れていたせいか、ストーリーに没入出来ずやや辛い読書になってしまった。3人の女が代わる代わるマーロウに絡んでくるが、次々と出てくる登場人物との相関が複雑で、なかなか読み解けない。いちばん悪い(かわいい)女は誰?猫の目のように表情をかえる女達に、マーロウ共々翻弄された。もうちょっと余裕のあるときに再読したい本。それにしても毎度、なぜマーロウが殺されないのか不思議。
2018/07/24
催涙雨
面白くないわけではないのだが今までの作品に比べると異質に映る内容なため、あまり人気がないのも納得できる作品。登場人物がやたら多く物語も比較的冗長で散漫な印象も強い。行動や言動にマーロウの心情が反映されるような間接的な心理描写が中心な点は変わらないのだが直接的に感じられる描写も増えており、そういう点がこの作品をセンチメンタルな雰囲気へと変えているのかもしれない。出し抜けに明かされるプラトニックで淡色な恋心にも象徴される。言葉の交わし方などは変わらないのに哀愁を残すような切なさが香るどこか淋し気な作品だった。
2017/10/10
キジネコ
F・マーローは絶対的なヒーローではない。風采も上がらず 裕福そうでもなく 強そうでもない・・・でも、モテる・・ 今作では 「どうしてしまったんだマーロー?」と自分自身に再々問いかけてしまう。表題「かわいい女」は冒頭に登場する女性を指す?作中の全ての女性に向けられた作者の細やかな描写に、女性に対する愛を感じる。表紙の2フィンガーがゆっくりと氷を溶かすように謎に迫る探偵。最後に残ったのは 女性の心裏の謎。皮層をなぞる様な昨今の小説にはない深い奥行を感じさせるチャンドラー、再読も楽しく鮮度を失わないのはさずが。
2013/05/09
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