殺人は広告する (創元推理文庫 M セ 1-9)
殺人は広告する (創元推理文庫 M セ 1-9) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
まず驚くのは、本書が上梓されたのが1933年ということにである。それにしては、オフィスは現代と比してもそれほど違和感はないし、(男性たちと対等とは言えないものの)女性社員たちも、明るく生き生きと働いている。本書はシリーズ第8作目にあたるらしい。第1作の『誰の死体?』の時にも思ったが、このシリーズはひとえに貴族探偵ウィムジイ卿への共感が読者を分かつ。今回はウィムジイが庶民社会に潜入するという異色作なのだが、それゆえにファンの間での人気が今一つなのもよくわかるし、また逆にそんなウィムジイが愛らしいとする⇒
2018/09/25
Kircheis
★★★☆☆ ピーター卿シリーズ8作目。 作者自身の経験を活かし、広告会社を舞台にした殺人事件が描かれる。さすがのリアリティで面白く、この会社で働いてみたいと感じたほどだ。なお、ミートヤード嬢は自分自身を投影したキャラなのではないかと想像している。 貴族のピーター卿が、昼に普通に会社員やるという設定も楽しくて、個人的にシリーズでもお気に入りの作品だ。 ただし、犯人は特に推理しなくても明らかだし、麻薬組織のやり口も特段驚くほどのものではなく、ミステリとしては大したことない作品でもある。
2022/01/05
遥かなる想い
広告業界を舞台に、 死亡した前任者の謎を ブリードン氏こと、 ピーター卿が追う。 死因が階段から落ちてと いう間が抜けた設定も、 広告会社に勤める人々も ノー天気なのも、 全く緊張感のないタッチも、本作の特徴である。 セイヤーズ自身が広告業界 に勤めていたというのも 相まって、面白く読めるが はまることはない、そんな 話だった。
2015/09/27
ケイ
リズムのあるハチャメチャ感が楽しい。舞台の幕があがるなり何人もの登場人物がてんでにわめき立てながら芝居を始めたような出だし。戸惑う。ついていけない。人物表も多すぎて役に立たない。しかし、一度リズムに乗ってしまえば、人物たちの顔が表れ、表情や服装まで見えてきて、楽しくて仕方なかった。また、『広告コピー』の洒落たこと! そして、ハラハラドキドキの展開で後半はさらにスピードアップ。おそらく原文の雰囲気、リズムをそのまま生かしてくれた訳者に感謝だ。この作者、もっと読んでいかなくちゃ。
2017/07/19
セウテス
ピーター卿シリーズ第8弾。本作はシリーズを読んできた読者の為の、年末特番の様な作品である。広告会社で男性社員が、階段から転落して死亡してしまう。事故なのか殺人なのか社主に頼まれて、ピーターが社員となり大活躍するのだ。確かにミステリ要素は在るのだが、ピーターと会社内の魅力的な登場人物たちとの、広告業界の内側を舞台にした物語と言える。当時としては、正にモダンな社会の一面を、読者は味わう事が出来ただろう。ミステリとして斬新なトリックや意外な犯人当ての物語ではないが、潜入を知っているという優越感は案外気持ち良い。
2017/12/22
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