犯罪 (創元推理文庫)
犯罪 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
W-G
凄い読み味な短編集。導入はあっさりめ。『サマータイム』あたりから、含みを持たせた締めくくり方で、少しずつ頭がこんがらかってくる。昔のドラマ『世にも奇妙な物語』が全話アタリだったらこんな作品になるのかなと連想した。ラスト数行が意味深な話が多く、『サマータイム』と『緑』に関しては、自分でも、ちゃんと理解出来ているか自信がない。特に『緑』のラストの台詞はどう解釈されているのか、色んな人の意見を聞いてみたい。あと、『棘』の出勤カードの紛失のくだりは、ドイツではどれくらいリアリティが感じられるのだろうか。
2018/04/13
青乃108号
全11話、平均26ページでそれぞれの犯罪の発端から裁判の結審までを弁護士目線で語る、という結構無理矢理な本。当然の様に語り口は淡々としており、淡々とし過ぎて物語ではなくレポートを読まされている感覚になる。1話目の、50年に渡り年上女房に搾取され続けた男が、75歳にしてついに妻を殺してしまう話が唯一印象深い。しかしたった30ページ弱の短編ではこの男の虐げられた50年の重みは到底表現できていない。長編化されれば是非読みたい。その際には三部構成の大長編でお願いしたい。
2023/04/23
サム・ミイラ
いずれの話も短くさらりと読める。だが重い。ここには真実の重みがある。弁護士である作者の経験から書かれた十一の物語。悲しくやりきれなく、時に滑稽なほどに個性的である。それはここに描かれるのが犯罪を通して垣間見る人間の性そのものだからだ。感情を挟まず淡々と文章は続く。まるで調書のように。しかし私達はそのぶん作者の胸の奥の熱さを、すべての人への愛情を、優しい眼差しを感じ取れるのだ。ミステリとしても秀逸な「サマータイム」ヒューマニズム溢れる「エチオピアの男」デューク東郷をあて書きしたような「正当防衛」が良い(笑)
2018/10/12
KAZOO
このような作品が本屋大賞になるということは、結構本屋さんの従業員の方々も見る目があるということなのでしょう。作家自身の経験でさまざまな事件からのヒントを得ているのでしょう。11の短篇が収められていて、あまり飾り気のない文体が私にはあっていると思いました。話自体は期待すると肩透かしを食うような話もあったりで、玉石混交のような感じもしました。ただ私は好きな作家になりそうです。
2015/10/28
🐾Yoko Omoto🐾
弁護士である“私”が弁護人を務めた11の事件が描かれた短編集。誰かに感情移入させるような情感ある文体とは異なり、起こった事件のあらましと結末が実録さながらに淡々と綴られる。印象に残ったのは「銀行強盗は、かならずしも常に銀行強盗であるとはかぎらない」という一文。確かに法治国家において罪に法的裁きは必要ではあるのだが、そこにはそれぞれの様々な事情や理由や背景が往々にしてあり、罪=悪とは決して言いきれない事件も数多く存在するということを教えてくれる。マイベストは「エチオピアの男」「愛情」「フェーナー氏」→
2015/04/18
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