飛蝗の農場 (創元推理文庫 M ト 5-1)
飛蝗の農場 (創元推理文庫 M ト 5-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
デ・ジャヴと壊れたカセットによってテープが所々、ランダムに再生されるような猥雑且つ奇妙な場面が続く。それらが、とある予感を持って明らかになっていく時にはもう、ページを繰る手が止められませんでした。最後に信じられないような混乱を齎す不吉なラストは個人的には好きです。とある人物の狂気よりも結局、自分で自分を慰めたいだけに自分を責めて相手に肯定し、依存しようとするヒステリーチックなキャロルの方に激しい嫌悪感が湧きます。でも『飛蝗』の意味は一体・・・・。
2013/10/17
本木英朗
英国の現代ミステリ作家のひとりである、ジェレミー・ドロンフィールドの、驚愕のデビュー作である。俺は2003年に一度読んでいた。ヨークシャーの荒れ野で農場を営むキャロルの前に、謎めいた男が現れた。一夜の宿を請われ断るの段を経て、不幸な経緯から、ショットガンで男に傷を負わせたキャロル。看護の心得のある彼女は応急処置を施したが、意識を取り戻した男は、以前のことを何も覚えていないと言う――という話だ。2回目であるが全然覚えていなかったので、本当に凄かったです、ハイ。さすがは作者である。またいつか読もうっと!
2024/02/02
よもぎだ
個人的にはうまく刺さらずの作品。結構などんでん返し的な展開を用意した感を後半で感じた(ような雰囲気)のですが、ミスリードが結構中途半端と言いましょうか、その展開想像通りですやん、と心の突っ込みが一部入る展開もそこそこ多く惜しいなぁと思いつつ最後まで読んでしまった作品。全部ショットガンで吹き飛ばすくらいの爽快感が欲しかったですが、男と女だと色々ありますからね。飛蝗の農場というタイトルは少々理解できなかったのも自分の読解力の低さなのか響かないものになってしまいました。
2024/08/09
Small World
「ーなんだ、これは?」、訳者あとがきと解説の始まりのこの言葉に集約されるのが本書です。様々なエピソードが挿入されるのですが、それらを読んでいくうちに、読む側には予感が感じられます、が、しかし、みたいなw。複雑な話なのにグイグイ読めるのは訳者さんのおかげなのかもしれません。それでもクライマックスでは、もうわけわかんなくなるし、オチもあれなんですが、勢いで読ませてくれる作品でした。(このミス2003海外編第1位作品)
2020/06/12
Cinejazz
この悪夢と戦慄の物語は、E.ブロンテの『嵐が丘』を彷彿させる英国ヨ-クシャ-に、飛蝗を飼育する農場を営む女性(キャロル)もとに、記憶を失った謎の男(スティ-ブン?)が転がり込んできたことに始まる、まさに読者の脳髄を震撼させる サイコロジカル・スリラ-! 作者<ジェレミ-・ドロンフィ-ルド>の、執拗なまでに濃密な人物描写と心理描写は、場面転換ごとに深まる迷宮の世界に金縛りとなり、圧倒的な筆力で迫りくる驚愕のエンディングに至るまで、かって味わったことのない、異色のエンタテイメント長編小説。
2024/10/04
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