納骨堂の奥に (創元推理文庫)
納骨堂の奥に (創元推理文庫) / 感想・レビュー
HANA
一族が眠る納骨堂を開けると、そこには死体が。という内容と冒頭の文体から、ユーモアミステリを想像してたのだが……。年の離れた夫、強情な姑、古い名門一族と『レベッカ』を思わせられるなあ。そのようにヒロインの境遇が結構重たく、しかも事件が進むにつれて事件自体が家族に忍び寄ってくるようになっているし。その為にミステリ要素よりサスペンス要素の方が強く感じられた。ミステリとしても、一歩一歩真相に迫る内容には引き込まれたけど。著者のミステリにしては陰惨な内容だったけど、ヒロインの芯の強さに救われるような作品であった。
2017/07/26
セウテス
セーラシリーズ第一弾。シャンディシリーズとの違いは、まず此方は現実のボストン郊外。そして、臨場感いっぱい先の読めない話運びに、身の危険を感じさせるサスペンス感が強い。ユーモアは所々に表現されていますが、そこはかと無く悲哀が漂います。先祖代々の納骨堂を開けると、見知らぬ女性の白骨遺体があった。夫と義理の母との生活は、考えられない方向へ走り出す。最後まで気を抜けない展開と、以外な真相に驚いた。そして今回の事件は無事解決するのだが、セーラがこれからどうなるのか思わず心配になり、次回作が早く読みたくなりました。
2015/02/28
norstrilia
なかなかハードな展開を見せるシリーズ第1作。どちらかといえば軽妙な会話、名門一族という設定のお約束、セーラ(主人公)のロマンスといった要素がメインで、ミステリ要素は二の次・・・かと思いきや、意外としっかり謎が明らかになっていく過程は秀逸。重きを置いている部分ももちろん魅力的。時折挟まれるユーモアも効いている。さすが、復刊。
2015/12/08
みみずく
セーラ・ケリングシリーズ第1作。ボストンの旧家出身のセーラ。19の時に彼女の父が死に、管財人となった従兄アレックスと結婚した彼女だが、夫のことはとても愛していて、目と耳が不自由な気難しい義母(伯母)ともなんとかうまく付き合っている。ある日ケリング家の納骨堂から女性の他殺体が見つかったことから、セーラはケリング家の実態を暴くことになる…。浅羽莢子さんの訳が恋しくなって軽い気持ちで読み始めたのだが、全編に渡ってなんとも物悲しい雰囲気だった。(続)
2015/03/04
歩月るな
完全に予想を裏切られた。シリーズものだと言うからそっち方面で全く頭が回らなかった。一段落付いたところで、さて一体どうやって事件を解決するのか、何を問題とすべきなのか、戦っていくのか、と思わせておいての展開である。これでシリーズものとして書き継いでいった事が単純に凄い。シャンディ教授ものは一作目しか読んでないが、こちらの舞台はハーバードや「ボストン茶会事件」のボストン。主人公が若い女性である点で中々煽情的な情景が書かれているが、浅羽訳、訳者解説ともに流石の趣。次は氏の訳出で刊行年の近い『死者の書』に行こう。
2018/06/16
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